研究課題
東京電力(株)福島第一原子力発電所の爆発事故以降、放射性セシウムの内部被爆が問題となっている。放射性セシウムは、インスリンの標的臓器である筋肉組織に取り込まれることが知られている。本研究は、放射性セシウム内部被曝がインスリン感受性に影響を明らかにすることも目的とする。申請者の居住地で、低線量であるが放射性セシウム(1μSV/h)に汚染された土壌を、オートクレーブにて、高温高圧滅菌し、放射性セシウム以外の微生物等を除去した。また、放射性セシウムが検出されない地域より採取した土壌を同様の方法で滅菌したものをコントロールとして用いた。これらの土壌を床敷に混入し、定期的に食餌量と体重測定を施行し、5週間後に正常血糖・高インスリンクランプ検査にてインスリン感受性を評価した。放射性セシウム内部被曝によるインスリン感受性に及ぼす影響について検討した。通常餌群において、5週間の放射性セシウム内部被曝は、糖代謝に影響を及ぼさなかった。高脂肪食負荷によるインスリン抵抗性モデルラットにおいて、5週間の放射性セシウム内部被曝は、正常血糖高インスリンクランプ検査にて、全身のインスリン感受性を示すGIRは、7.5%有意に減少し、インスリン抵抗性の増悪が認められた。しかし、アディポネクチンをアデノウイルスを用いて過剰発現させると、GIRは16.5%有意に増加しインスリン抵抗性の改善が認められた。さらに、高脂肪食群での骨格筋Aktのリン酸化は、放射性セシウム内部被曝により減少し、アディポネクチン過剰発現により増加した。以上の結果より、正常耐糖能状態では、5週間の放射性セシウム内部被曝はインスリン感受性に影響を及ぼさないが、インスリン抵抗性状態では、僅かであるがインスリン抵抗性を増悪させる可能性が示唆された。しかし、そのインスリン抵抗性の増悪はアディポネクチンにより改善させる可能性が示唆された。
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