研究課題/領域番号 |
24659575
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
松村 耕治 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部共同利用研究施設, 講師 (30272610)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
マウスiPS細胞から胚葉体を経由した分化誘導法の手技を確立した。すなわち、in vitroで拍動する心筋細胞や神経細胞、軟骨様細胞を確認できた。適切な放射線照射量がどの程度であるか否かを検討するため、予備実験での8Gyに加え4Gy, 12Gy照射も行い、照射後の未分化細胞の割合をフローサイトメーターで測定した。その結果、GFP陽性の未分化細胞は、容量に依存して減少した。8Gy以上では、照射前の未分化細胞は10%以上存在したものが1%前後に減少した。 次に、各々の容量で照射した分化誘導細胞をマウスの精巣へ移植して奇形腫発生の有無を検索した。12週後、放射線照射しないものは全てにおいて奇形腫の増殖が認められたが、8Gy照射後に移植したグループは14匹中9匹(64.2%)は精巣内で腫瘍様の増殖は認められなかった。以上より、分化誘導した際に、分化抵抗性の未分化細胞を選択的に除去するための放射線照射は、奇形腫の発症予防のために有効である事が示唆された。 本研究の、奇形腫発生を放射線照射で抑制する方法はこれまで報告がなかった。日本再生医療学会、国際幹細胞学会で報告した。さらに、ヒトiPS細胞を利用して放射線感受性、放射線照射後の残存未分化細胞の割合、免疫不全マウスへの移植を継続している。 未分化ヒトiPS細胞のコロニー形成能により放射線感受性の実験を行った所、マウスiPS細胞の感受性より高かった。しかし、放射線照射後約2週間の観察の結果、12Gy以上の照射が適切であった。現在、ヒトiPS細胞の神経細胞、心筋への分化誘導に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスiPS細胞がNanog遺伝子の発現と連動してGFP蛍光を出す事により、当該年度の本研究計画で抗体染色等が不要であった。細胞を分離して容易にフローサイトメーターで解析できた。そこで、照射後に残存する未分化細胞を簡単に測定できたため、分化誘導した細胞へ照射する放射線容量を比較的簡単に決定できた。 マウスiPS細胞は、ヒトiPS細胞に比べると分化誘導が行い易く、しかも、日数も短く済むために実験の期間が長期的にならない。マウスへの移植に関しては、免疫不全マウスを利用したが、同種の細胞移植であるため生着しやすい。放射線照射処置を行なっていない分化誘導細胞がほぼ100%近く奇形腫を発症した事は驚きでもあった。放射線処理群が奇形腫を発生しない良いコントロールとなった。 しかし、ヒトiPS細胞の分化誘導法に苦労している。京都大学iPS細胞研究所にアドバイスも受け神経細胞系への誘導を行っている。今後の実験遂行上の一つの課題である。
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今後の研究の推進方策 |
マウスiPS細胞で研究の方向性をつかめたので、臨床へ少しでも役立つようにヒトのiPS細胞の実験を主に行う。未分化細胞は抗体(SSEA4, TRA-1-60)などで蛍光染色して分化誘導後の残存細胞の割合、放射線照射の影響を調べる。放射線照射は、臨床で利用されているような分割照射(2,3回)も考慮に入れて、未分化細胞により効果的で分化した正常な細胞に影響の少ない照射法を考慮する。 放射線照射に加え、最近報告されている、未分化細胞の増殖を特異的に阻害するオレイン酸構成酵素阻害剤による処理や癌の温熱療法を応用した加温による未分化細胞の除去を考える。 分化誘導に抵抗性の細胞の遺伝子プロフィールを調べるために、マイクロアレイやリアルタイムPCRを行い、なぜ分化誘導に応じないかの考察を深める。 分化誘導後の細胞の種類を、神経細胞や心筋以外に、適切なスキャホールを用いた骨や皮膚への分化誘導を行い、移植前の放射線照射等の効果を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒトのiPS細胞を主に利用するため、その維持のための培養液、血清、増殖因子(FGF等)、分化誘導のサイトカイン類、蛍光標識抗体の費用が主となる。移植用のマウスは現在SCIDマウスを利用しているが、より免疫不全なNOD-SCIDマウスの利用を試みるため追加の費用が発生する。遺伝子発現解析のための、核酸抽出、標識、マイクロアレイ、PCR用の試薬類も必要となる。マウスiPS細胞の成果を報告するためのデータ整理や欧米雑誌投稿のための費用も必要となる。
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