研究概要 |
脳虚血疾患は、命に関わることや脳機能障害が残るなど、重篤な疾患である。さらに、運動麻痺に対する効果的な治療は未開発である。将来、脳に神経細胞移植が行われることを見越して、移植細胞の動態を追跡し、同時に脳虚血の病態変化も評価を試みた。良好なMRI造影剤であり細胞内に取り込まれて一定期間保持されるというMn2+の性質に注目し、末梢血単核球をマンガン造影剤で標識し、MRIを用い経時的に体外画像評価した。 中大脳動脈を塞栓子で虚血・再灌流した脳虚血モデルラットに、定位脳手術装置を用い、穿頭孔を作製し26G穿刺針から標識単核球2μLを線条体部に注射した。小動物用1.5-T MRIとsolenoid MRIコイルを用い、持続吸入麻酔下に撮像を行った。2D Spin echo(SE)法によるT1強調画像にて冠状断面と水平断面を得た。移植直後、12時間後、22時間後に撮像した。また、移植直前に2D multi slice(MS)法によるT2強調画像にて冠状断面を得た。移植直後は投与部に集簇している標識細胞を経時的に観察すると、対照群では同心円状に広がるが、脳虚血群では脳虚血部方向への広がりが早かった。移植後の生理機能を評価すると、脳虚血群では、平均血圧が移植後2週間に比べ3週間で有意に上昇し、対照群レベルとなった。移植29日後に脳を摘出し、HE, KB, CD31, TUNEL, TN-Cにて評価した。 末梢血単核球にマンガン標識し経時的にMRIで撮像することにより、脳病変においても移植細胞の動態評価が可能であった。使用したマンガンの投与量では、有害事象はみられなかった。微量で行えるマンガン標識は、動物実験のみならず、安全性を確立した後には臨床にも有用と期待された。
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