研究概要 |
腫瘍には、様々なジェネティック・エピジェネティックな異常、すなわち、個性が存在し、結果として、放射線に対する感受性・抵抗性に違いが出てくると考えられる。これまで、放射線感受性・抵抗性に関与するSNPなどの遺伝子多型、ゲノムのコピー数異常など、ジェネティックな側面に関して多くの研究がなされてきている。しかしながら、放射線感受性・抵抗性におけるエピジェネティックな側面からの研究はほとんどなされていない。そこで、本研究では、放射線によるエピジェネティックな転写制御の分子基盤を確立することを目的とし、放射線に応答する転移関連遺伝子群の発現を制御するエピジェネティックなメカニズムを明らかにする。 マウス扁平上皮がん細胞のNR-S1による肺転移モデルを用いた。マウス下肢にNR-S1を移植して1週間後(約7mm腫瘍)、ガンマ線15Gyを局所腫瘍に照射した。照射1時間後と1日後に局所腫瘍からRNAとタンパク質を回収し、腫瘍の転移に関連することが報告されている遺伝子Twist, Snail-1, Snail-2, および、腫瘍が転移するときに基底膜を破壊する働きを有するMMP2, MMP9の発現をqRT-PCRにて検討した。その結果、Twist, Snail-1, MMP2, MMP9ではガンマ線照射1日後にその発現が非照射と比較して減少した。一方で、Snail-2の発現は照射の有無により影響されなかった。以上のことより、ガンマ線により転移関連遺伝子の発現が抑制されることが明らかとなった。 次に、ガンマ線によるエピジェネティックな制御を明らかとすることを目的とし、ガンマ線照射後のヒストン修飾の変化をWestern blotting により検討した。Preliminary な結果ではあるが、ガンマ線照射1日後においてヒストンH3の修飾が変化する可能性が示唆されている。。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記載がある1年目の転移関連遺伝子の発現解析をおこない、Twist, Snail-1, MMP2, MMP9遺伝子がガンマ線照射により変化することを明らかとした。また、放射線照射によりヒストンH3の修飾に変化が認められた。したがって、一年目の計画はおおむね順調に進んでいると考えられる。
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