研究課題/領域番号 |
24659578
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
菅野 巖 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 主任研究員 (10360356)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 中大脳動脈閉塞モデル / マウス / 脳虚血 / 脳血流量 / 虚血炎症 / PET / TSPOマーカー / 中枢性ベンゾジアゼピン受容体 |
研究概要 |
研究課題に関連するこれまでの文献検索およびパイロット実験を行った。マウスの適切な虚血モデルとして、中大脳動脈基幹部の焼灼によるMCAOモデルを作成し、そのマウスを用いたPET測定、脳血流測定を行い、適切な脳虚血モデルとして使用できることを確認した。マウスのPET測定では採血が困難でかつ限られた分解能の範囲では左右の病側健側比で相対的な評価が可能な片半球虚血モデルが適切であり、比較的強い虚血をもたらす中大脳動脈モデルが適切であると判断した。虚血後の脳循環の経時変化を両側にレーザードプラー血流計(LDF)を装着して両側脳血流量を同時に測定した。患側部のCBFの低下が数日続いた後でも、刺激に対する血流反応性は長期に渡って低下を続けた。また、PETでの炎症マーカーであるAC5216によるTSPOのPET評価をコントロール、MCAO3日、9日、12日後に行い、左右比では虚血側の上昇が12日目まで確認でき、虚血炎症が長期間継続することがわかった。また、中枢性ベンゾジアゼピンマーカーフルマゼニルによるMCAO14日目のPET評価では虚血側の低下を示し、神経受容体の活性の低下が長期間続くことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は本事業のゴールを目指したパイロット実験を施行し、次年度の本実験の研究の準備を行った。本事業は脳虚血モデルを作成して、そのもとでの微小脳循環の経時変化と、PETによる虚血炎症のTSPOマーカーの評価やベンゾジアゼピン受容体結合能の経時変化を検討した。脳虚血後の虚血病態を脳血流だけでなくPETによる分子イメージング的な評価で行ための基礎データが得られた。順調にパイロット測定を実施できたので、次年度の本実験の実験計画を詳細に立てることができた。 また、本研究の基本となる慢性低酸素マウスでの脳微小血管の脳機能賦活による血管径の変化について分かった知見をISOTT(国際酸素組織移行学会)で関口が報告した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度実施したパイロット測定を下にB6マウスを用いる実験を行う。使用する脳循環測定法は頭骨骨窓を介したスペックル血流計を用い、コントロールを1回、虚血後は1日目から14日目までの間に3回施行する。PETはTSPO炎症マーカーとして[C11]-PBR28 と中枢性ベンゾジアゼピンマーカーして[C11]-フルマゼニール(FMZ)を用い、PET設定の手間の減少と画像融合の手数を除くため同日に行い、また、これらの薬剤供給の回数を減らすために、1回の供給で2台の動物PET装置を用い、各4匹ずつ合計8匹を同時に計測する。PET測定は、コントロール、虚血後3~4日目、7~8日目に施行する。施行直後に断頭固定して、ミクログリア、アストロサイト、神経細胞を計測する。これらの健側/患側比を対応部位のTSPO-PETやFMZ-PETの健側/患側比と対応する。本研究のゴールはMCAO後のTSPOマーカーとベンゾジアゼピン受容体結合の分子細胞機能と脳血管反応性という血管機能の経時的推移の関係を明らかにすることで、これまでそれぞれ単独で測定されている機能の経時関係を明らかにできる。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費として、マウス、薬品および免疫組織標本作成に38万円、研究報告のための国内および海外学会旅費に49万円、その他(学会登録費)に13万円、合計100万円を使用予定。
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