研究課題
膵島移植は糖尿病の根治につながる治療法であるが、移植された膵島の生着を直接的に評価できる検査法は、未だ確立していない。近年、MRIを始めとする画像検査が膵島の生着評価に試行されているが、低侵襲かつ短時間で病変を確認できる超音波検査は、移植膵島の生着評価に有効で実用的な検査法となりうる。膵島は微小であり、通常の超音波画像では描出することは不可能だが、微小気泡(マイクロ/ナノバブル)超音波造影剤と組み合わせることで移植膵島を描出できる可能性がある。本研究の目的は、膵島を特異的に造影できる超音波造影剤を開発し、超音波検査で移植膵島を描出できるかを検討することにある。今回、我々は、PEG修飾リポソームに超音波造影ガスであるパーフルオロプロパンを封入し、修飾PEG部にオクトレオチド結合させて膵島を特異的に造影する微小気泡性超音波造影剤を試作した。その効果を正常血糖マウスと糖尿病マウスの膵臓に超音波検査を行うことで評価する。この造影剤を使うことで、門脈内移植された膵島が、超音波検査によって肝臓内で確認ができるか、同種同系移植と異種移植マウスの動物実験で評価する。さらに大型動物(ブタ)を用いた実験で移植膵島が確認でき、その安全性が確立する。また、膵島移植領域だけではなく、膵内分泌腫瘍(インスリノーマ)に対してもこの手法で局在と転移の有無/程度が確認できるかを評価する。今年度はオクトレオチドを結合させたマイクロバブル超音波造影剤を試作した。オクトレオチドが結合された事は、これを結合しないコントロールのマイクロバブルと比べ重量が増加している事で証明した。この造影剤を実際にマウスの尾静脈より注入し、高周波超音波検査を行ったところ、非造影下で低エコー域として認められた膵臓は造影により高エコー域として捉えられるようになった。また、投与後もマウスは生存し、安全性についても確認できた。
2: おおむね順調に進展している
造影剤の試作とパイロットスタディを行うことができ、おおむね順調に進行していると考える。
課題1. 膵島を特異的に造影するナノバブル造影剤の開発と機能評価9週齢相当雄性BALB/cマウスの腹腔内にストレプトゾトシンを投与して、糖尿病マウスを作成する。無処置の正常血糖マウスあるいは糖尿病マウスに全身麻酔下で超音波検査(VEVO770:Visualsonics: Bモード、焦点深度10mm、中心周波数35MHz)を行い、膵臓の位置を確認する。膵臓が描出できる位置に超音波端子(1MHz)を固定した上で)、本造影剤をマウスの尾静脈より投与し、投与後の膵臓を描出の上、録画する。膵臓(膵島)の描出イメージを両群間で比較する。血糖値測定と血清C-ペプチド測定は超音波検査と同日に行い、超音波検査所見とこれらの代謝性パラメータの相関を評価する。課題2. 小動物を用いた膵島移植実験と微小気泡性造影剤による移植膵島の描出マウス(同種同系)もしくはラット(異種)に膵島分離を行い、糖尿病マウスの門脈に同種同系もしくは異種の膵島を移植する。移植後経時的に血糖/血清C-ペプチドを計測するとともに、作成した造影剤をレシピエントラットに投与し、超音波検査を行う。同時期に尾静脈より採血し、血糖と血清C-ペプチド測定も行う。同種同系もしくは異種膵島移植グループと対照グループにおける移植部の描出イメージを比較し、移植膵島が確認できるか否かを評価する。また、血糖値と描出された膵島の個数との相関を回帰分析にて評価し、耐糖能と画像所見との間に相関があるか否か検討する。
該当無し
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Islets
巻: 4 ページ: 339-342
10.4161/isl.22384
Exp Diabetes Res
巻: 2012 ページ: 256707-256707
10.1155/2012/256707
http://researchmap.jp/read0154889/