研究課題
腫瘍血管の内皮細胞や脳腫瘍で過剰発現が認められるαVβ3およびαVβ5インテグリンに対して特異的に結合する環状RGDペプチド(cRGD)をリガンド分子として搭載したDACHPt内包ミセルを開発した。得られたcRGD導入ミセルは、ヒトGlioblastoma U87MG細胞の皮下移植ならびに同所移植モデルに対して優れた抗がん活性を示すことが確認された。cRGD導入ミセルのがん集積メカニズムをin vivo共焦点顕微鏡を利用して評価した結果、cRGD導入ミセルは速やかにがん組織へと移行することが観察された。このようなリガンド分子の導入による速やかながん組織への移行はEPR効果で説明することは困難であり、トランスサイトーシスによる能動的移行によるものであると考えられる。さらに、cRGD導入ミセルは全身毒性を大幅に低減させ、最大耐用量(MTD)を3倍に増加可能であることが確認された。これらの毒性低減メカニズムに関して、胆汁を経時的に回収し、胆汁中に含まれるPt量をICP-MSによって評価した結果、cRGD導入ミセルは肝実質細胞によって取り込まれた後に速やかに胆汁へと移行することが確認された。すなわち、cRGD導入ミセルでは、ミセルから活性型のDACHPtがリリースされる前にミセルとして体外へと排泄されるために肝臓や消化器等への毒性が回避されるものと考えられる。このように本研究では、cRGDリガンドが抗がん剤内包DDSの毒性を能動的に低下させ、治療域を大幅に拡大することを世界で初めて明らかにすることができた。
1: 当初の計画以上に進展している
昨年度までの調整したリガンド導入ミセルを用いて、皮下ならびに同所の脳腫瘍モデル動物で治療効果を確認できた。また、リガンドの効果についてミセルの血中から脳腫瘍への移行をダイレクトに観察でき、さらにはそれらのメカニズムについて明らかにできたことは非常に大きな進展であった。
cRGD密度やミセルのサイズなどと血中から脳腫瘍へのミセルの移行性については、さらに検討する必要がある。このような諸因子・関連性を明らかにすることで、脳腫瘍を標的としたDDSキャリアの設計に有用な知見が得られると予測している。
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Journal of the American Chemical Society
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ACS Nano
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http://www.bmw.t.u-tokyo.ac.jp/