研究概要 |
平成24年度には実験系の準備として、標的化に必要となる抗体確保、in vitroとin vivo双方に共通して使用可能なヒト腫瘍細胞株の選別、マウス体内での同細胞株の抗原性の確認を行った。リポソーム(lip)合成には最低2mgの精製抗体が必要で、回転培養による大量培養を行った。この上清を精製し、SDS-PAGE法で、不純物を含まないことを確認した。さらに、マウス皮下腫瘍モデルの作製と皮下腫瘍および各臓器の標本作製を行い、腫瘍は皮下の原発巣のみに存在することを確認した。 次に、lipの集積実験として、蛍光内包lipの評価を行った。In vitroではCy3内包lipを表面抗原の発現が確認されている腫瘍細胞に添加し、暴露時間、投与濃度を変更しながら観察した。標識lipで一定の集積を確認した。さらに、in vivoの実験においては上記マウスへのCy5.5内包lipの投与を行った。投与直後,3,18,24,48,72時間後にIVISで非侵襲的に体内での蛍光の集積を確認し、48時間後に腫瘍への最も強い集積を認めた。以上からlipの一定の集積は確認できたが、集積効率の向上が課題と考えられ、表面修飾を変更したlipを作成した。 平成25年度にはこの改良型lipを用い集積実験を行った。In vitroでは前年度のin vivo実験での結果を参考に暴露時間の延長や投与濃度の増加等の変更を行い、前回より集積度を向上させることができた。ただし、腫瘍細胞が形成する腫瘍塊への付着を疑う所見も認めたことから、顕微鏡による目視以外の判定法開発も課題と考えられる。in vivoでは今回から腫瘍モデルの作成時に細胞担体の使用を中止し、より生理的な条件に近付けたうえでlip投与を行った。前回の結果から投与直後,2,4,6,24,48時間後と短時間に集中的に測定し、24,48時間後に前回よりも高い集積が得られた。
|