研究課題/領域番号 |
24659592
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
平田 公一 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50136959)
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研究分担者 |
佐藤 昇志 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50158937)
鳥越 俊彦 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (20301400)
田村 保明 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), その他 (80322329)
廣橋 良彦 札幌医科大学, 医学部, 助教 (30516901)
水口 徹 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (30347174)
木村 康利 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80311893)
九冨 五郎 札幌医科大学, 医学部, 講師 (10404625)
河野 剛 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (50516664)
小川 宰司 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (70516658)
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キーワード | 癌 / 膵 / 免疫 / 幹細胞 / side population |
研究概要 |
平成24年度から25年度に至る成果のまとめとしては以下の如くである。 膵癌細胞株Su8686およびBxPC3からside population (SP)の同定と分離に成功し、SP細胞は高度のin vivo造腫瘍能を有しており、癌幹細胞形質を持っていることを証明した。 大腸癌幹細胞から同定された特異抗原遺伝子OR7C1に関しては、ある種の癌ではこのOR7C1が過剰に発現していることが知られており、予後予測のマーカー、および、新しい癌特異抗原の候補になりうると考えられる。 膵癌細胞株の3次元培養を行い、幹細胞性の高い細胞の培養を行ったところ、幹細胞遺伝子ならびにOR7C1の高い発現を認め、癌幹細胞の細胞ではOR7C1が過剰に発現している可能性が示唆された。RT-PCR法にて、半定量的に膵癌株におけるOR7C1の発現を解析したところ、他の遺伝子と比較して有意に強い発現を示した。さらに、フローサイトメトリーにてOR7C1過剰発現細胞と低発現細胞にソーティングし、マウスでの腫瘍形成能ならびに各種遺伝子発現量につき検証したところ、OR7C1高発現細胞群で高い腫瘍形成能を認めた。 上記より、OR7C1と癌の発育に関連がある可能性が示唆されている。今後、過去の手術標本の免疫染色を行い、関連する臨床病理学因子を調査する予定である。また、現在候補として浮上しているOR7C1をターゲットとして、当初の目標であった膵癌幹細胞特異的CTLクローンの樹立と細胞障害性について探究する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵癌幹細胞の分離に成功したことに加えて、同細胞の腫瘍形成能を確認するとともに、分子レベルで幹細胞の特性を有することを把握しえた。癌幹細胞抗原に関してはいくつか報告があるが、健常成人では嗅球にのみ発現している遺伝子であるOR7C1が膵癌幹細胞において高い発現を認めた。さらにOR7C1過剰発現を示す癌細胞株は、マウスでの高い腫瘍形成能を示した。癌特異抗原の検索から、このように膵癌幹細胞と密接に関わる標的分子の候補を得たことは、本研究におけるテーマにおいて根幹に関わる部分の達成であると考えられ、平成25年度の研究についてはおおむね成しえたと考えている。今後、OR7C1の発現と臨床検体を免疫染色して発現量と予後の関連性を調べ、予後不良因子との結果であるならばターゲット分子として臨床的にも重要な標的分子となる。癌幹細胞抗原に対するがん免疫療法の候補として、抗原提示のメカニズムを解明することは非常に重要である。抗原蛋白質のアミノ酸配列をもとにpeptide binding assay法を用いてHLA-A24、または、HLA-A02に提示される抗原ペプチドの構造を同定していき、さらに、特異的CTLクローンの樹立と細胞傷害性について検討していく予定である。次年度はさらなる研究により、臨床応用可能な幹細胞標的ペプチドワクチンの創薬にむけて、現計画を達成していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
膵癌幹細胞としてSPから得られる特定し得た当該細胞を対象とし、膵癌幹細胞抗原の候補遺伝子の同定を試みるとともに、その遺伝子から確定しうる分子をターゲットとしたCTLクローンの決定を行う。平成25年度の研究ではいくつかの幹細胞特異的抗原の候補において特異的CTLの誘導率が課題となったが、これを解消し、以下の研究を行う。 【A.抗原特異的CTL クローンの決定とその細胞障害性に関する研究】(1)抗原分子の発現性の確認。特異的CTLを樹立する。Peptide binding assary法を用いてHLAの高速性も同定する。(2)得られたCTLクローンを用いて細胞障害性を検討。51Crリリースアッセイ、ELISPOTアッセイにて候補特定抗原が標的となるがん幹細胞の腫瘍抗原として扱えるか否かを確認する。①がん幹細胞の分子生物学的特性について、分離前臨床治療法、例えば、化学療法の有無別の比較検討を行なう。②治療後予後の差からみての差からみる幹細胞の性状の有無を確認する。 【B.膵癌幹細胞の各種CTLに対する感受性の確認】抗原分子を認識するCTLクローンが、化学療法剤に対して抵抗性を示す癌幹細胞を殺傷しうるか否かを検討する。用いるeffector CTLクローン種の中でその有効性を比較検討する。 【C.膵癌幹細胞抗原の候補遺伝子の同定】平成24年度においては、各種の抗原分子を探索し、SP細胞、MP細胞に対して共通抗原分子を先ず特定すると共に、念のため特異的抗原の探索を行なう。方法論としては、非癌幹細胞に比し、癌幹細胞で高発現している遺伝子を同定する。それらすべての中から、functionの理解されている遺伝子を念頭において注目すべき遺伝子を銓衡する。その上でそのノックダウン細胞株を作成し、その形質内容を把握したい。
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