研究概要 |
本研究は、近年に複数報告されているmicroRNA(miRNA)によるリプログラミングを利用した体細胞の心筋分化誘導を目的としている(Lin SL. RNA. 2008, Miyoshi N. Cell stem cell. 2011, Anokye-Danso F. Cell stem cell. 2011)。初年度はレトロウィルスによるmiRNAの導入法を試みたが、その発現量が少なかったため、mature sequenceのmimicによるトランスフェクション法に切りかえた。導入したmiRNAは初年度と同じhsa-miR-302a, -302b, -302c, -302d, -367(Thermo Scientific Japan)の市販品を利用した。導入細胞はマウス胎児性線維芽細胞(MEF)を用いて、Miyoshiらの報告(Cell Stem Cell, 2011)を参考にRNAiMAX(Life Technologies)を用いたトランスフェクション法にて遺伝子導入した。導入したmiRNAは全種類の導入が確認され、一度の導入で2日間、発現していることが確認された。さらに2日に1回、同様の手順にて遺伝子導入した。8日目に遺伝子発現を定量的RT-PCR法にて解析したところ、リプログラミング時に観察されるSox2遺伝子発現は観察されなかった。このことから、現在のmiRNAの組合せではリプログラミングされていない可能性が示唆された。そこでnCounterシステム(NanoString Technologies)を用いて我々はヒトiPSCのmiRNAの発現変化を解析したところ、リプログラミング初期に有意に変化しているmiRNAの特定に成功した。これらは、リプログラミングに関与していることが報告されているmiRNAも存在しているため、今後の導入miRNAとして検討していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初期リプログラミングに関連したmiRNAは複数報告されているものの、miRNAのみでのリプログラミングの報告しているチームは少ない。現在もリプログラミングに利用される因子は山中4因子(Oct4, Sox2, Klf4, c-Myc, OSKM)が世界的にも主流であり、複数のmiRNAのみを用いた誘導法はほとんど報告されていない。このことはmiRNAによるリプログラミングはOSKMと比べるとその誘導効率が低いことが原因であると推測される。そこでこれらの効率を向上させる、さらには誘導に適した因子を中心に解析していく必要がある。
|