microRNA(miRNA)を含むnon-coding RNA(ncRNA)は細胞内の遺伝子発現制御に大きく関わっており、iPS細胞作製の際にも大きな影響を与えることが報告されている。その中でmiRNAを用いたiPS細胞への誘導が報告され、新たなリプログラミング因子としてmiRNAが注目されてきた。我々はこの手法を応用した心筋分化を試みたが効率的なリプログラミング現象を再現できなかった。この原因としてホスト細胞のRNA環境が重要な意味を持つと予想し、我々はリプログラミング時に起きる細胞内のRNA環境の変化に着目した。この結果、リプログラミング誘導初期(72時間程度)に大きく発現が一過性に増加するncRNA RNY1を発見した。RNY1は113 ntの小さなRNAで細胞質に多く存在し、リプログラミング因子を添加した際に発現量を一過性に大きく増加させる。siRNAにてこの発現を一過性に抑制するとネガティブコントロール群と比較すると有意にiPS細胞への誘導効率が低下することを明らかとした。 これの結果から細胞内のRNA環境のコントロールすることでリプログラミング効率を向上できる可能性を示唆することができた。
|