研究課題/領域番号 |
24659595
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
久田 将之 東京医科大学, 医学部, 講師 (50385100)
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研究分担者 |
土田 明彦 東京医科大学, 医学部, 教授 (50207396)
善本 隆之 東京医科大学, 医学部, 教授 (80202406)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | IL-27 / ミエロイド系前駆細胞 / 細胞療法 |
研究概要 |
(1)TRAIL発現誘導を介した腫瘍細胞増殖誘導:3種類のヒトメラノーマ細胞をIL-27で刺激すると細胞増殖が抑制され、その際TRAIL発現がmRNAレベルで増強された。細胞表面上での発現は、3種類の細胞で大きく異なっていたが、TRAILの中和抗体により有意に増殖抑制がキャンセルされた。次に、抗腫瘍作用を有することが報告されているpoly(I:C)をIL-27と一緒に加えると、さらに強い増殖抑制作用を示した。この時、poly(I:C)のレセプターであるTLR3発現もIL-27で誘導され、さらにpoly(I:C)と協調的に増強され、この効果はTRAILの中和抗体による有意にキャンセルされた。最後に、NOD/SCIDマウスにヒトメラノーマを接種した1週間後から毎週IL-27とpoly(I:C)単独、または両方を投与すると、poly(I:C)の高用量では、poly(I:C)単独でも強い腫瘍増殖抑制効果を示したが、低用量ではIL-27をさらに加えることにより増殖抑制効果が増強された。 (2)ミエロイド系前駆細胞さらにDCへの分化誘導:マウス骨髄細胞をIL-27およびSCF単独とIL-27+SCFで培養すると、両方を入れた時のみ骨髄細胞の増殖が強く見られ2ヶ月に渡り細胞が増えてきた。この時の、細胞表面マーカーでFACS解析を行ったところ、c-Kit++CD11b+/-の集団とc-Kit+/-CD11b++の集団の大きく2つの細胞集団が増えてきていた。そこで、in vitroで1ヶ月以上培養し増幅した細胞を、通常のDCへ分化誘導する条件であるGM-CSF+IL-4で培養すると、骨髄細胞を取って直ぐ分化誘導したDCと同様に、強い抗原提示能力を有していた。さらに、OVAを取り込ましマウスに免疫1ヶ月後、EG7(OVA遺伝子を導入したEL-4)胸腺腫を植えると強い抗腫瘍ワクチン作用を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、まずTRAILおよびTLR3発現誘導を介したIL-27単独さらにpoly(I:C)との協調的な抗腫瘍作用を示すことができ、現在論文投稿中である。さらに、マウス骨髄細胞をIL-27+SCFで培養するとミエロイド系前駆細胞を増やすことが可能であることを明らかにすることができたので、当初の目的はほぼ達成されたと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、腫瘍モデルマウスを用いてIL-27で分化誘導したミエロイド系前駆細胞と、それからさらに分化誘導したDCおよびマクロファージの抗腫瘍効果やその作用機序についても明らかにする。次に、ヒト末梢血単核球などを用いて、ヒトでの同様な分化誘導の可能性についても検討を行う。 (1)ミエロイド系前駆細胞およびそれから分化したDCおよびマクロファージの抗腫瘍効果:卵白アルブミン(OVA)をマウス胸腺リンパ系腫瘍細胞EL-4に遺伝子導入したEG7やマウスメラノーマB16F10に遺伝子導入したB16F10-OVAなどを用いて、皮下接種後OVA抗原でパルスしたIL-27で分化誘導したDCやマクロファージを静注し、腫瘍増殖への影響を調べる。次に、グリーン(GFP-Tg)マウスから調製したミエロイド系前駆細胞やその細胞から分化誘導した細胞も同様に静注し、これらの細胞が腫瘍組織の周りに集まるかその分布状態を組織学的に解析する。これらの検討より、IL-27を用いた新しい免疫細胞療法の有効性を、これまでの方法で誘導したDCとも比較しながら明らかにする。 (2)ヒトミエロイド系前駆細胞への分化・増殖誘導:ヒト末梢血由来単核球(PBMC)をSCF+IL-27で培養し、同様にミエロイド系前駆細胞が増えてくるか調べ、増えてくればやはり上述と同様にさらにそこからDCやマクロファージへの分化を調べる。増えてきた細胞の機能的な解析を行うため、これらの細胞を抗原提示細胞としてアロ(同種異系HLA)T細胞を刺激して細胞増殖を誘導するリンパ球混合反応(MLR)で調べる。次に、ヒトPBMC中のCD14陽性単球をGM-CSF+IL-4で分化誘導して調製した通常のDCの細胞表面マーカーや抗原提示能力と比較する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の若干の未使用金は、最終的に交付金額と同額に端数を合わせることが難しいための、次年度への繰り越し金とした。これと次年度の交付金額を合わせた全ての経費は、上述の実験遂行に必要なマウスや抗体、試薬、培養器具などの消耗品代に充てる予定である。
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