研究概要 |
1.GFPを導入したマウス大腸癌細胞colon26細胞を作成し、同系のマウスへの足部皮下腫瘍作成モデルにて、所属リンパ節を採取し、その中の腫瘍細胞を同定するとともに、免疫細胞(リンパ球、抗原提示細胞)のphenotypeをFACSにて測定した。担癌マウスのリンパ節はコントロールマウスと比べ、CD11b+Gr1+のmyeloid derived suppressor cells (MDSC),およびCD19(+)B細胞の分画が59%~120%程度に有意に増加しており、逆にCD3(+)CD4(+)のhelper T 細胞の比率が約1/4に低下していた。しかし、CD4(+) CTLA-4(+)の制御性T細胞の比率には変化がなかった。 2.ヒト腹腔内より浮遊細胞を分離、培養すると間葉系幹細胞の性質を持つ細胞が樹立され、TGF-b刺激によってmyofibroblastの形質を発現するようになることを確認した。この細胞の増殖は、Hypoxia, Hypoglycemiaにて著明に抑制され、その原因にautophagyが関与している可能性が考えられた。 3.mTOR阻害剤Temsirolimusは三種の大腸癌細胞株CaR1, HT29, Colon26に対して有意な増殖抑制効果を有する事を確認した。このTemsirolimusにautophagy阻害剤クロロキンを併用すると、その抑制効果は有意に増強された。また、マウスの皮下腫瘍モデルにて、クロロキンの併用はTemsirolimusに効果を有意に増強することをIn Vivoにても確認した。さらに、バイオイメージング装置を用いた解析にて、腫瘍組織の微小血管密度がクロロキンの併用によって著しく低下していることが判明した。この事実から、クロロキンによるautophagy阻害が腫瘍内の血管新生阻害に関与する可能性が示唆された。
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