研究課題/領域番号 |
24659605
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
波多野 悦朗 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80359801)
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研究分担者 |
上本 伸二 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40252449)
田浦 康二朗 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80378629)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 肝切除 / 肝不全 / ARFI / 肝線維化 |
研究概要 |
肝切除後肝不全は肝切除術後の致命的な合併症であり、その発生のリスクは、肝予備能と切除により失われる肝臓の大きさとにより規定される。最近肝臓の硬さを測定する新たな方法としてARFI(Acoustic Radiation Force Impulse)が注目されており、肝予備能低下の程度を肝臓の硬さという形で定量的且つ非侵襲的に評価しうる可能性が出てきた。本研究はARFIによる肝硬度測定が肝切除後肝不全を予測する因子として有用であるか否かを検討することが目的である。 本年度においてすでに約100例の肝切除患者において術前ARFIによる肝硬度測定を施行した。血液データ(Alb, T-Bil, D-Bil, AST, ALT, ICG15分値、ICG消失率、PT、APTT、アンモニアなど)、手術因子(術式、手術時間、出血量など)、切除標本中の線維化の程度(F因子)などの臨床因子を収集しデータベース化している。術後肝不全発生の有無、程度をInternational Study Group of Liver Surgeryより提唱された肝切除術後肝不全の国際的な基準(Surgery. May 2011; 149(5): 713-724.)に従い評価している。また、これ以外に難治性腹水、胸水、脳症の発生などをモニタリングし、データベースに記録している。 肝切除により失われる非腫瘍部肝実質体積およびその割合は、CT volumetryにより計算をしている。これまでAZE社Virtual Place LexusによりCT volumetryを行ってきたが、年度末に富士フイルムSynapse Vincentを導入し活用を始めたところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載したとおり、本年度の肝切除症例においてすでにデータ収集は順調に進んだ。CT volumetryのために富士フイルムSynapse Vincentも導入され、活用を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで同様に肝切除症例全てにおいてインフォームド・コンセントの上、ARFIによる肝硬度測定、CT volumety、術後肝不全のモニタリングを行い、粛々とデータ集積を重ねる。また、切除標本非癌部の線維化の評価をより正確、定量的に行うためにSirius red染色、Masson Trichrome染色を行う。症例が目標数に達ししだい、ARFIによる肝硬度測定、切除容積割合と術後肝不全発生の確率についてROC解析を行い、肝硬度測定が術後肝不全発生の予測に有用であるか否かを検討する。さらにこれまで術前肝予備能の評価に用いられてきたICG試験や一般的な血液検査指標(PLT、ALT、T-Bil、アルブミン、PTなど)においても同様の解析を行い、ARFIによる肝硬度測定との優劣を判定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画のとおり研究を遂行し得ているが、線維化の定量的な評価は症例が目標数に達したところでまとめて行うためまだ施行しておらず、研究費に余剰が生じた(300,275円)。これは今年度線維化の定量的評価を行う際に使用する予定である。また、データ解析、保存のためのコンピューターソフト、バックアップディスクなども併せて購入する予定である。
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