研究概要 |
①正常の胎児腎臓細胞株Human Embryonic Kidney 293と線維芽細胞MRC5に、変異型K-Ras遺伝子を導入した。miR arrayを用いてコントロールと比べて変異導入前・後で比較して、変化率の大きいmiRを求めた。K-ras下流の癌活性化シグナル経路としてMAPK/ERK/SRE, AP1の二つにまず着目し、HEK293にK-ras遺伝子を導入することで、SRE、AP-1のレポーターplasmid のluciferase活性が上昇することを確認した。miR arrayでK-ras導入後に発現減少したmiRを、同系にtransfectし、SRE, AP-1活性を有意に抑制するものを拾い上げた。これらの多くは、K-ras変異を有する大腸癌細胞株においても、SRE, AP1活性を抑制し、MAPK/ERK、MAPK/JNK活性亢進の是正が確認できた。 ②In vitro実験で細胞増殖抑制効果、アポトーシス誘導について検討した。ふたつのmiR-X, miR-Y はK-ras変異を有する大腸癌細胞株に対して、増殖抑制効果を示し、Annexin Vによるアポトーシスassayで有意にアポトーシスを誘導することがわかった。 ③K-ras変異株大腸癌細胞株HCT116をヌードマウス皮下に移植し、腫瘍容積が80mm3になってから尾静脈よりmiR-Yを静注した。その結果、コントロールmiRを静注した群と比べて有意に腫瘍抑制効果を認めた。 ④ セツキシマブとの併用効果について現在in vitro, in vivoで検討を進めている。miR-X, miR-YはMAPK経路を抑制するが、EGFRの下流経路はK-ras以外のstreamもブロックすることから、両者の併用により、更に強い抗腫瘍効果を期待できる可能性が考えられるからである。
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