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2012 年度 実施状況報告書

がん幹細胞のGenetic instabilityに着目した新しい癌治療の構築

研究課題

研究課題/領域番号 24659614
研究機関九州大学

研究代表者

前原 喜彦  九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80165662)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード癌幹細胞 / 染色体不安定性 / LgR5 / CD44
研究概要

本研究計画は、1)消化管癌のCancer stem like cellにおけるGenetic instablityの同定、2)大腸癌術後再発におけるCancer stem like cellとGenetic instabilityの関係の解、3)短腸症候群モデルマウスを用いた、消化管幹細胞分化のシグナル伝達の解析、を目的としていた。本年度はそのうち、1)の研究計画を行うため、CD44やLGR5などの幹細胞のマーカーを用いて大腸癌臨床検体の免疫染色をおこない、幹細胞の同定を行ない、癌幹細胞の大腸癌における分布を検討した。
昨年度新たに研究協力者となった、小林らにより、これまで免疫染色でLgR4、LgR6を区別して評価することは困難であったLgR5を特異的に検出可能な抗体が今回開発された。この抗体を用いた場合、ヒトの大腸癌サンプルを移植したマウスにおいて腫瘍の浸潤部、budding、 肝転移巣に特異的に癌幹細胞が発現していることが指摘された。このLgR5を発現する細胞を同定し、マウス移植にて継代を繰り返すことにより、LgR5を持続的に発現する大腸癌幹細胞様細胞株を樹立した。幹細胞マーカーLGR5陽性のこの癌幹細胞様細胞株にCPT-11を加えると、細胞は増殖を停止し、LGR5陰性の薬剤耐性の状態に移行するが、CPT-11を除去すると、LGR5陽性の増殖性癌幹細胞に戻ることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初計画では、臨床検体を用いて癌幹細胞を同定し、濃縮したのちに、癌細胞との比較を行う予定であったが、幹細胞の同定と標本からの幹細胞のみのマイクロダイセクションが困難であった。本年度研究協力者より癌幹細胞マーカーLGR5の抗体および細胞株を分与されることにより、今後の研究計画の順調な推進が可能となった。

今後の研究の推進方策

今後の研究計画は分与されたLgR5抗体および大腸癌幹細胞用細胞を用いて行う予定である。
進行した胃癌や大腸癌では術後化学療法を行うことがガイドラインにて提唱されているが、術後化学療法を行なったのちに再発した場合、同じ化学療法に抵抗性であることが示されている。また、その抵抗性は化学療法を行なった期間や化学療法を終了してからの期間によって左右されることも報告されている。これらは、化学療法後の癌や再発したがん細胞がEMTやCancer stemの形質を持っている可能性を示唆している。今後の研究計画では、化学療法後や、再発した大腸癌においてCancer stem-like cellを同定し、そのGenetic instabilityの変化を検討する。がん幹細胞の休眠状態にGenetic instabilityがどう関わっているのかを検討する。

次年度の研究費の使用計画

本年度は臨床検体を用いた検討として
①大腸癌臨床検体を用いて、術前未治療群と術前治療群でのLgR5発現量、分布の違いを検討する②化学療法の効果の違いによるLgR5発現量、分布の違いを検討する。
樹立された細胞株を使用した検討として
③幹細胞化とメチル化の検討:LRG5陽性幹細胞とLRG5陰性幹細胞のLINE1のメチル化のstatusを検討する。また、同じく、両者での DNA aneupoidy、SNP arrayなどの違いを確認する。元の細胞株との変化を確認する。④LRG5発現細胞における活性酸素の影響の検討:正常細胞はp53が異常な場合、活性酸素(ROS)によりM期チェックポイントタンパクのup-regulationが生じ染色体構造が不安定になることが示唆されている。LRG5陽性幹細胞とLRG5陰性幹細胞におけるploidy statusを解析し、それぞれの細胞内におけるROSの蓄積を測定する。LRG5陽性幹細胞とLRG5陰性幹細胞のROSに対する反応をvitroで行い、幹細胞の増殖に染色体構造の変化が関与しているのかを検討。その際のシグナルとしてのAKT経路やMAPkinase系なども検討する。⑤細胞株における染色体不安定性とLRG5の発現検討:所有する細胞株で、ploidy status, M期チェックポイントタンパクの発現を解析済みの細胞株5~7種を用いて、LRG5の発現をRT-PCR, western blottingで確認する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Prognostic relevance of KRAS and BRAF mutations in Japanese patients with colorectal cancer2013

    • 著者名/発表者名
      Nakanishi R
    • 雑誌名

      Int J Clin Oncol

      巻: Nov 29

    • DOI

      23188063

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Vimentin as a poor prognostic factor for triple-negative breast cancer.2013

    • 著者名/発表者名
      Yamashita N
    • 雑誌名

      J Cancer Res Clin Oncol

      巻: Jan 26

    • DOI

      23354842

    • 査読あり
  • [雑誌論文] CtIP- and ATR-dependent FANCJ phosphorylation in response to DNA strand breaks mediated by DNA replication2012

    • 著者名/発表者名
      Sakasai R
    • 雑誌名

      Genes Cells

      巻: 17 ページ: 962-970

    • DOI

      23157317

    • 査読あり
  • [雑誌論文] FANCJ expression predicts the response to 5-fluorouracil-based chemotherapy in MLH1-proficient colorectal cancer2012

    • 著者名/発表者名
      Nakanishi R
    • 雑誌名

      Ann Surg Oncol

      巻: 19 ページ: 3627-3635

    • DOI

      22526901

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Clinical aspect and molecular mechanism of DNA aneuploidy in gastric cancers.2012

    • 著者名/発表者名
      Oki E
    • 雑誌名

      J Gastroenterol

      巻: 47 ページ: 351-358

    • DOI

      22402775

    • 査読あり
  • [学会発表] 胃癌における細胞周期の制御因子Plk1過剰発現と染色体不安定性の関連2012

    • 著者名/発表者名
      大津 甫他
    • 学会等名
      日本消化器外科学会総会
    • 発表場所
      富山
    • 年月日
      20120718-20120720
  • [学会発表] 胃癌における紡錘体形成チェックポイントタンパク質BUBR1発現およびDNA aneuploidyの意義2012

    • 著者名/発表者名
      安藤幸滋他
    • 学会等名
      日本外科学会定期学術集会
    • 発表場所
      千葉
    • 年月日
      20120412-20120414

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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