研究課題/領域番号 |
24659617
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
馬場 祥史 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (20599708)
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研究分担者 |
坂本 快郎 熊本大学, 医学部附属病院, 特任助教 (00452897)
石本 崇胤 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 特任助教 (00594889)
岩上 志朗 熊本大学, 医学部附属病院, 医員 (70530153)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | IGF2 DMR0 / エピジェネティクス / メチル化 / 食道癌 / 予後因子 / pyrosequence |
研究概要 |
Pyrosequencing technologyにより、パラフィン包埋ブロックを用いて食道癌IGF2 DMR0メチル化レベルが正確に測定できるかを検討した。まずPyrosequenceのbisulfite→PCR→Pyroという行程をそれぞれ5回ずつ独立して行うことにより、その再現性を評価した。bisulfite行程及びPyro行程の標準偏差はそれぞれ0.86、0.33-0.42と低値であったため、食道癌パラフィンブロックから作成された切片を用いて、PyrosequenceによりIGF2 DMR0メチル化レベルを測定することの妥当性が示された。Pyrosequenceが臨床応用に非常に適したツールであることから今回の結果は非常に意義があると考えられる。次に、このassayを用いて、食道癌202例のIGF2 DMR0メチル化レベルを測定した。食道癌のメチル化レベルは、正常上皮と比べて有意に低値であった(p<0.0037; N=35)。癌部におけるIGF2 DMR0メチル化レベルは、平均値31.9、中央値29.7、 標準偏差9.1であり、また30例の免疫染色でIGF2強陽性例は陰性例・弱陽性例に比し有意にメチル化レベルが低く(P=0.023、P=0.012)、食道癌においてIGF2 DMR0低メチル化症例(<30%)は有意に全生存期間が短く、予後不良であった(log-rank p=0.026; 単変量HR=1.82, 95% CI 1.06-3.04, p=0.032; 多変量HR=2.17, 95% CI 1.23-3.73, p=0.0083)ことから、食道癌IGF2 DMR0メチル化レベルは、食道癌の予後予測因子となりうることが示された。食道癌は非常に予後の悪い疾患であるが、今回の結果は患者別の個別化治療に貢献できる可能性があり、非常に臨床的意義があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書に記した予定通りに研究は遂行され、意義深い結果が得られた。これらの結果は、現在癌研究の一流誌に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、食道癌IGF2 DMR0メチル化レベルとLOIの関係について研究を進めていく予定である。LOIの判定には、以前から使用されていた方法として、IGF2の塩基配列内にあるSNPを用いて二つのアレルを区別化することでLOIの判定を行っていた。しかし、同判定法ではinformativeとなる症例が限られているため臨床応用できるとは言い難い。そこで、IGF2 DMR0メチル化レベルがLOIのsurrogate markerとなることができれば、ほぼすべての症例のLOIの判定が可能となり、予後との関連がさらに意義深いものとなると考えられる。LOIの判定にはより質の高い凍結切片から抽出したDNAを用いる必要があり、多数の症例を蓄積するにはやや困難が生じる。その際には他施設からの試料提供が必要となる場合がある。 次に、抗癌剤感受性の関連について研究を進めていく予定である。また、食道癌細胞株を用いたin vitroの研究も開始する予定であり、準備を行っている。食道癌細胞株のIGF2 DMR0メチル化レベルを測定し、in vitroでの癌細胞浸潤能、増殖能、細胞サイクルを検討したうえで、Docetaxelや5-FU感受性などとの関係を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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