研究概要 |
IGF2 DMR0メチル化レベルはIGF2 LOIと密接に関係しており食道癌におけるIGF2 DMR0メチル化レベルと臨床病理学的因子等との関係を解析することが本研究の目的である。まず、Pyrosequencing technologyにより、パラフィン包埋ブロックを用いて食道癌IGF2 DMR0メチル化レベルが正確に測定できるかを検討した。Pyrosequenceは、bisulfite→PCR→Pyroという行程からなるが、それぞれ行程を5回ずつ独立して行うことにより、その再現性を評価した。bisulfite行程及びPyro行程の標準偏差は、それぞれ0.86、0.33-0.42と低値であった。よって、食道癌パラフィンブロックから作成された切片を用いて、PyrosequenceによりIGF2 DMR0メチル化レベルを測定することの妥当性が示された。Pyrosequenceは多数のサンプルを迅速に測定することができ、臨床応用に非常に適したツールであることから、今回の結果は非常に意義があると考えられる。次に、このassayを用いて、食道癌202例のIGF2 DMR0メチル化レベルを測定した。食道癌のメチル化レベルは、正常上皮と比べて有意に低値であり(p<0.0037; N=35)、癌部におけるIGF2 DMR0メチル化レベルは、平均値31.9; 中央値29.7, 標準偏差9.1であった。また30例の免疫染色でIGF2強陽性例は陰性例・弱陽性例に比し有意にメチル化レベルが低かった(P=0.023、P=0.012)。食道癌において、IGF2 DMR0低メチル化症例(<30%)は有意に全生存期間が短く、予後不良であった(log-rank p=0.026; 単変量HR=1.82, 95% CI 1.06-3.04, p=0.032; 多変量HR=2.17, 95% CI 1.23-3.73, p=0.0083)ことから、食道癌IGF2 DMR0メチル化レベルは、食道癌の予後予測因子となりうることが示された。食道癌は非常に予後の悪い疾患であるが、今回の結果は患者別の個別化治療に貢献できる可能性があり、非常に臨床的意義があると考えられる。これらの結果はAnnals of surgical oncologyに採択された。
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