研究課題
これまでに食道癌患者を対象とし、血清中の糖鎖の網羅的解析を行い、食道癌に特異的な糖鎖マーカーを検索した。食道癌患者37例と健常者の11例を用いて,検体の血漿から、タンパク質と修飾N型糖鎖を糖鎖精製キットBlotGlycoで遊離した.ヒドラジド基を有するビーズで遊離N型糖鎖を標識した後にMALDI-TOF-MSで精製分離、質量分析を行った。得られたデータをSIMCA-P+を使用し多変量解析した。得られた糖鎖の発現パターンをもとに、健常者群と食道癌患者群との間でOPLS法による層別化が有意に可能であった。また、健常者群と食道癌患者群間で、両者の層別化が可能な発現糖鎖が6つ抽出可能であった。この6糖鎖を利用し、健常者と食道癌患者の半数症例との間で判別モデルを構築し、残り半分の食道癌患者で判別可能かを検証したところ、モデルのAccuracyは、87.5%であった。今回,健常者11検体と食道癌患者63検体を用いて,Profiling Solution(データ抽出ソフト)による網羅的な観測イオンの抽出を行った.GlycoModを用いて糖鎖構造(文献等で報告されている糖鎖構造のみ)の中から18糖鎖 を選択した.これらの18糖鎖による多変量解析を マン・ホイットニーのU検定により有意差検定を行い、有意差がある糖鎖のみを選択 して検討した.有意差が認められた糖鎖は4つ抽出された.このうち3つは,過去に行ったMALDI-TOF-MSで抽出された糖鎖構造と一致し,新たに1つの糖鎖が発見された.これらの糖鎖は食道癌に特異的で精度の高い糖鎖マーカーとして利用できると考えられた。
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