研究課題/領域番号 |
24659619
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
中村 泉 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (80423804)
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研究分担者 |
大木 進司 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (20381361)
齋藤 元伸 福島県立医科大学, 医学部, 研究員 (90611749)
竹之下 誠一 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (10167489)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | miRNA / MSI |
研究概要 |
我々はmiRNAの成熟過程におけるMSIの影響につき、以下の仮説を立てた。 「仮説-I」 MSI近傍の静的変異による2次構造の変化がprimary-miRNAの切り出しに影響与える。 「仮説-II」TRBP遺伝子やAGO2遺伝子のフレームシフト変異がPre-miRNAの生成に影響を与える。 「仮説-III」スプライシング配列周辺のマイクロサテライトの変異がmiRNAの結合を阻害に影響する。 まず、平成24年度は上記「仮説I」についての検討を行った。stem-loop構造を複数持った数百~数千塩基程度のprimary miRNA(pri-RNA)として転写される。Pri-RNAは核内で切断され70塩基程度のprecursor miRNAとなる。これまでの文献より正常組織と比較し大腸癌においてその発現パターンが大きく変化しているmiRNAを選定した。特にMSIとMSSにて発現状態の異なるmiR-142-3p,miR212,miR151,miR144、MSI-LとMSI-Hにおいて発現パターンの異なるmiR-92, miR-223, miR-155, miR196a, miR-31, miR26bのMSSのサブタイプ分類に有用なmiR-320, miR-498に注目した。これらのmiRNAのstem-loop周囲配列にマイクロサテライトあるいはSNPなどの遺伝子変異を持つpre-miRNA をmiRBaseより抽出を試みた。次にmfoldDNA folding program(DNA折り畳構造の自由エネルギーを計算)を用いて2次構造の変化を確定し、この変化がmiRNAの形態・切り出しに影響するか検討した。結果として選定したmiRNAの周囲で観察されたマイクロサテライト、SNP、欠失/挿入によりmiRNAの結合エネルギーが大きく変化することは無く「仮説-I」は否定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「仮説-I」 MSI近傍の静的変異による2次構造の変化はprimary-miRNAの切り出しに影響を与えないことを証明した。しかし最近、甲状腺乳頭癌においてKIT遺伝子の3’UTRに存在する遺伝子多型がmiR-146あるいはmiR-222の結合エネルギーを大きく変化させたとの報告もあり、さらに多くのmiRNAについて検討する必要があるかもしれない。本年は研究の効率をあげるため、文献的検討とDATABASE検討を中心に選択するmiRNAの絞り込みに時間をかけた。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は主として「研究 –II」につき検討を進める。RNaseIII型の酵素であるDicerと複合体を形成しmiRNA/miRNA*を生成するTRBP遺伝子(TAR RNA-binding protein 2)はexon5に(C)5,(C)7の2つの一塩基繰り返し配列をもつ。その他AGO1遺伝子、AGO2遺伝子、EXPORTIN5遺伝子はそれぞれ、一塩基繰り返し遺伝子を持つ。HCT116およびLoVo等のMSI-H細胞株とMSS細胞株、さらには臨床検体を用いて同遺伝子の変異をキャピラリー・シークエンサーを用いたSSCP法にて判定後、MSI-H細胞株とMSS細胞株でのmiRNA発現をリアルタイムPCRを用いて解析する。 26年度は「研究 –III」について検討を行う予定である。スプライシングを制御するRNA配列5‘および3’スプライス配列、ブランチ部位周辺の配列、エキソン内やイントロン内に存在するスプライシングエンハンサー配列あるいはスプライシングサイレンサー配列(ESE,ISE)(ESS,ISS)近傍のマイクロサテライトをESE finderよりピックアップする。その位置に対応するマイクロサテライトおよびSNPsをBlast、JSNPをもちいて検索し、HCT116およびLoVo等のMSI-H細胞株とMSS細胞株、さらには臨床検体を用いて同遺伝子の変異をキャピラリー・シークエンサーを用いたSSCP法にて判定後、MSI-H細胞株とMSS細胞株でのmiRNA発現をリアルタイムPCRを用いて解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
経費活用の予定は当初の計画から大きな変更はない。 経費の内容の多くは消耗品であり、内訳は細胞培養に関わる培地類また遺伝子検索に関わる試薬、および免疫組織学的染色のための交抗体類、試薬類が大部分を占める。これらは研究を進めるうえで必須のものである。旅費は関連学会への参加のためである。詳細は以下に記載する。 ・消耗品中の薬品および実験器具は、遺伝子抽出作業、cDNAクローニング、抗体作製、免疫組織化学、培養細胞株を用いた解析などを行うにあたり月100,000~250,000円で概算している。 ・成果発表のため旅費について、各年度あたり国内3-4回、海外1回を想定している。 ・全経費の90%を超える費目はない
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