研究課題/領域番号 |
24659620
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡邉 聡明 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80210920)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 大腸癌 / 血行性転移 / 遺伝子発現解析 / マイクロアレイ / テーラーメイド治療 |
研究概要 |
bevacizumab は、VEGFによる腫瘍の血管新生を阻害することにより、大腸癌の増殖を抑制することが知られている。しかし、bevacizumab を投与しても約40%-50%の症例には効果が期待できないことや、消化管穿孔など極めて重篤な合併症も報告されている。また、従来の薬剤に比して高額である。従って、安全性、ならびに医療費抑制の点からも、bevacizumab の効果が期待できる症例を選別して投与することが重要である。しかし、現在までに、大腸癌に対するbevacizumab の効果を高精度で予測するマーカーは確立されていない。そこで本研究では、より効率的な治療を行うために、遺伝子発現解析により臨床的応用の可能なbevacizumab療法の効果予測式を作成することを目的とした。外科的切除後再発を認め、再発巣の外科切除が不能な症例、および大腸癌の診断時に切除不能な転移巣を有する症例のうち、bevacizumab療法が施行された症例を対象とした。これらの症例の初回手術時に採取された大腸癌組織あるいは内視鏡検査時に採取された大腸癌生検標本を用い、遺伝子発現解析のためにSepazolを用いtotal RNA を抽出した。また、再発時に再発巣の組織が採取可能な場合には,再発巣の組織からSepazolを用いtotal RNA を抽出した。これまでに14症例のtotal RNAを抽出した。また、これらの症例のCT検査など画像診断を中心とした臨床的データによりbevacizumab療法の効果の有無を解析している.効果に関しては,現在も臨床経過から効果の有無の判定が確定できない症例があるため、継続して効果判定を行っていく予定である.また、現時点では症例数が十分でないため遺伝子発現解析を行って予測式を作成する段階には至っていないため,今後継続して症例を蓄積していく予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸癌の化学療法では,近年様々な新薬が承認されてきた。この中にはbevacizumab と同様な分子標的薬である抗EGFR抗体薬も含まれる.従来の大腸癌に対する化学療法では如何に生存期間を延ばすかが重要な課題であった.ところが近年抗EGFR抗体薬が承認されてからは、化学療法により腫瘍を著明に縮小させ、外科的切除が困難であった症例を最終的に外科的切除に持ち込む、いわゆるconversion therapyが注目されてきた。このconversion therapyのためには、腫瘍縮小効果が高い抗EGFR抗体薬が有用であるとする考え方があり、最近は外科切除に持ち込む可能性を考慮して抗EGFR抗体薬を使用する症例も多くなってきた背景がある。このためbevacizumabを投与する症例が以前よりは減少した傾向があり、その結果として本研究の対象症例も当初の予定のように集積できなかった事情がある.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、bevacizumab 投与例を継続して追加して遺伝子発現解析から効果予測まで検討を進めていく予定である。ただし、bevacizumabと抗EGFR抗体薬、あるいは他の抗癌剤の選択に関しては、あくまで患者の状態、希望を最優先して治療方針を決定していく予定である.
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|