研究課題
近年の大腸癌術後化学療法の進歩、特に抗EGFR抗体薬の登場により生存期間が著明に伸びた。しかし分子標的薬の効果は個人差があり、また高価であるため、事前に効果予測による投与対象の選別が必須である。現在の効果予測はKRAS遺伝子の変異の有無で判断しているが、それだけでは不十分である。そこで、本研究では、薬剤感受性の異なる大腸癌細胞株および大腸癌手術組織を用いて、最先端のリン酸化プロテオミクス技術による網羅的なリン酸化タンパク質の解析を行い、新規薬剤効果予測バイオマーカーの同定および定量法の確立を目的とした。平成25年度は、より多くの細胞内リン酸化タンパク質・リン酸化ペプチドの定量を目指して、網羅的側面とターゲットを絞った側面からの技術的改良を加えた。網羅的リン酸化タンパク質・ペプチド解析法の改良としては、これまでリン酸化ペプチドの濃縮に用いてきたIMACだけでなく、抗チロシン抗体を用いた免疫沈降法を併用することにより、従来の2倍以上のチロシンリン酸化ペプチドを同定することに成功した。また、IMAC濃縮後のHPLC分画法の改良により、1回の実験で30,000リン酸化ペプチドの定量に成功した。ターゲットリン酸化プロテオミクスにおいては、細胞内シグナル伝達に関わる主要なキナーゼ・基質のリン酸化ペプチド287種類について、SRM/MRM法を用いた定量法の基礎検討を行った。現在までに20種類のリン酸化ペプチドの定量に成功した。また、EGFR下流のパスウェイ上のキナーゼに絞ってウエスタンブロットを行ったところ、リン酸化PDPK1は抗EGFR抗体薬耐性株に比して、感受性株で発現が増大していることが示された。このことから、PDPK1キナーゼの活性化が抗EGFR抗体薬の感受性に関与していることが示唆された。
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