研究課題/領域番号 |
24659625
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中島 淳 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (90188954)
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研究分担者 |
佐野 厚 東京大学, 医学部附属病院, その他 (20569834)
村川 知弘 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50359626)
垣見 和宏 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (80273358)
松下 博和 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (80597782)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 肺癌 / 次世代シーケンス / RNAシーケンス / エクソームシーケンス / ミスセンス変異 / 変異ペプチド / 固有抗原 / 免疫反応 |
研究概要 |
本研究の目的は、個々の肺がんにおける遺伝子変異に基づく固有抗原の同定と肺がんの個別化がん免疫治療の開発である。次世代シーケンスとMHC class I binding prediction法を用いて、肺がん患者から免疫原性の強い固有抗原の同定を行う。肺がん組織のがん部と非がん部(コントロール)からRNA シーケンスとエクソームシーケンスにより、がん特異的なミスセンス変異を同定する。この変異により新しくつくられる変異ペプチドのアフィニティをImmune Epitope Database and Analysis Resourceを用いて計算し候補となる固有抗原を選出する。 肺がんに先立ち、既に当院でがん組織のがん部と非がん部(コントロール)の両方がセットで入手可能であった膵がん組織2例、PK001(HLA-A1101, 2402)とPK002(HLA-A0201, 2402)を用いて、RNA シーケンスとエクソームシーケンスによりそれぞれの患者に固有のミスセンス変異を同定した。 PK001ではRNA シーケンスにより874個の塩基置換を認め、エクソームシーケンス の結果を合わせSNPsやシーケンスエラーを除くとがん特異的なミスセンス変異は6個に絞られた。この中でMHC class I binding prediction法でHLA-A24に高いアフィニティを示すものが3個あった。同様にPK002ではRNA シーケンスにより1650個の塩基置換を認め、エクソームシーケンス の結果を合わせるとがん特異的なミスセンス変異は41個に絞られた。 さらにMHC class I binding prediction法でHLA-A2に高いアフィニティを示すものが25個あった。現在、これらの膵がんの固有抗原の候補となる変異ペプチドを合成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は次世代シーケンスとMHC class I binding prediction法を用いて固有抗原を同定するために、当院で既にがん組織のがん部と非がん部の両方がセットで入手可能であった膵がんの組織を用いた。この2例の膵がん組織から、RNA シーケンスとエクソームシーケンスにより、それぞれ3個と25個の固有抗原の候補を選出することができた。 現在、これらの候補となる変異ペプチドを合成し、それらが実際に免疫反応を起こすか検証している。 原発性肺癌においても、肺癌組織の癌組織部と非癌組織部が両方の検体を倫理委員会の承認、本人のインフォームドコンセントを取得した上で取得することができた。このような組み合わせについては既に3例集まっており、RNA シーケンスとエクソームシーケンスを開始できる状態である。 次世代シーケンスとMHC class I binding prediction法を用いて、肺がんの候補となる固有抗原を選出するが、膵がんで行なった方法をそのまま肺癌に応用するだけなので、時間はかからない。絞り込んだ固有抗原の候補となる変異ペプチドを作成し、これらが実際に免疫反応を起こすか検証するステップも速やかに行うことが可能と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
膵がんにおけるHLA-A2拘束性の変異ペプチドに関しては、候補ペプチドを人工合成後、それらをHLA-A2トランスジェニックマウスに免疫し、マウス生体内で変異ペプチド特異的なCTLを誘導できるか検証する。具体的には変異ペプチドを数回マウスに免疫し、最終免疫1-2週間後に所属リンパ節や脾臓を採取し、それぞれの変異ペプチドと共培養し、インターフェロンガンマ(IFN-G)の産生をIFN-G ELISAあるいはIFN-G分泌アッセイ法で調べる。また、HLA-A24拘束性のペプチドに関しては、変異ペプチド合成後、患者のPBMCと共培養しIFN-G の産生を、同様にIFN-G ELISAあるいはIFN-Gb分泌アッセイ法で検出する。 IFN-G の産生のみられる変異ペプチドに関してはその野生型ペプチドも合成し、変異ペプチドのみに特異的に反応するかを検証し固有抗原を同定する。 原発性肺癌4例においても膵がんと全く同じ方法で行い固有抗原を同定する。最終的には、4例の原発性肺癌でどれくらいの数のミスセンス変異が存在し、その中でMHC class I binding prediction法によるアフィニティが高いものが何個あり、そのうちいくつの変異ペプチドが免疫原性をもっているか、そして何個の変異ペプチドを使った免疫治療が可能であるかなどを検討する。本研究期間内に、将来個別化がん免疫治療を行っていく準備段階としての基礎的データを得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の直接経皮公布予定額は合計1,500,000円である。 肺癌組織に対するRNA シーケンスとエクソームシーケンス、固有抗原同定のために必要な物品費として1,300,000円を必要とする。研究成果発表のため国内旅費として100,000円を必要とする。研究成果を英文論文にまとめ、投稿出版するための費用として100,000円を必要とする。(合計1,500,000円となる)
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