研究課題/領域番号 |
24659627
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
武藤 紹士 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30600829)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 血管外科 / 生体材料 |
研究概要 |
生体吸収性ステントと生体瞬間接着剤を利用した新しい血管吻合法の開発が本研究の目的である。従来の用手的直接縫合法と比較して遜色ない手術時間や止血性、吻合個所の十分な強度を確保する事で、これまで臨床的に実現していない大血管や主要分枝に対する接着剤血管吻合の応用を目指す。将来的には血管外科手術の成績向上や、外科治療困難例に対する手術適応の拡大を目標とする萌芽的研究である。 当該年度は主に動物実験への準備段階として、力学的な安全性の確認を行なう為にブタ頸動脈を採取し、ex vivoで吸収ステント内挿下に接着剤を用いた端々吻合を行い、以下に述べる生力学的な評価を行なった。コントロールとして直接縫合、直接接着吻合、金属ステント内挿+接着吻合の評価も併せて行った 1-1)牽引強度測定:全長10cmに調整したブタ頸動脈を中心部でメスを用いて離断し、血管径と同径のステントを内挿した後に吻合面を合わせた外膜面の水分を軽く除去してシアノアクリレートを用いて接着した。接着吻合した血管の両側端を牽引し、吻合個所の牽引強度を測定したところ直接縫合と同等以上の強度を得る事ができた。 1-2)バースト圧試験:研究1-1と同様に吻合を行った血管の片側を0号絹糸で3重結紮、対側は4mmバルーンのついたダブルルーメンカテーテルを挿入してから0号絹糸を用いて結紮。この血管に生理食塩水を満たしながらゆっくりと加圧していき、吻合部位の耐圧性を測定した。結果は動脈圧を越えた耐圧性を得る事が出来たが、接着断端面の形成に工夫を要し、また検体によっては接着剤の内腔流入や接合不良面からの漏出が確認されることから、今後の検討課題としていきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初作成した計画書に準じて、順調に進行している。 当該年度に行なった基礎的研究結果より、十分に動物実験に耐え得る耐久性を確保できると考えており、次年度には計画通りに動物モデルを用いた経時的な病理変化を中心に検討を行なう。
|
今後の研究の推進方策 |
in vivoでの強度確認実験及び手術手技の煩雑性について検討を行なう。ビーグル成犬を全身麻酔下に両側鼠径切開し、鼠径靭帯を引き上げて外腸骨動脈を露出する。全身ヘパリン化した後に動脈を遮断して一方を吸収性ステント+シアノアクリアクリレート、対側を6-0モノフィラメントナイロン糸を用いた連続縫合で端々吻合する。 術中観察項目は吻合時間、吻合後出血量及び出血時間を測定する。また術後観察項目は生存率、術後1,3,6,12ヶ月での血管超音波検査、血管造影検査、造影CT検査による吻合部位の形態学的画像評価及び、各エンドポイントで犠牲死させ検討部位を採取し、以下の項目を検討する。病理組織学的検討(Hematoxylin & eosin染色、Elastica van gieson染色、Masson trichrome染色)、免疫組織学的検討(PECAM/CD31、SM-Actine、CD45)、生力学的検討(牽引試験、バースト試験)。 動物実験の妥当性を考慮して、本実験は手術成績や生存率などの実験経過を考慮しながら、適宜実験頭数の増減や検討項目の追加を行なう予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
主にビーグル犬の購入費用及び手術費用に使用する。萌芽研究のため手術頭数を抑えビーグル6-7頭の購入を予定(約\750,000-を計上)している。また吸収性ステント、金属製ステントの購入(1本あたり約\150,000- x 手術頭数)の購入が必要となる。 画像診断機器、染色費用その他は既存の設備や試薬を使用する予定である。
|