研究課題
拡張型心筋症(DCM:dilated cardiomyopathy)は左室あるいは左右の両心室の心筋収縮の低下とその内腔の拡大を特徴とする疾患である。症状は、通常心不全に基づく症状や所見があり、しばしば進行性である。不整脈、血栓塞栓症、突然死の合併が高頻度にみられる。長期的には予後不良である。病因は、特発性、家族性(遺伝性)、ウイルス感染症、遺伝的素因、免疫異常、全身性疾患、代謝性疾患、高血圧・アルコール・薬剤・妊娠・中毒など複数の病因が考えられている。本症の病理所見(組織の顕微鏡所見のこと)は非特異的である。肥大型心筋症と異なり、家族性発症の頻度は高くなく、遺伝的な要素は少ないと考えられている。家族性拡張型心筋症は米国で20%、日本で25%と報告されている。家族性拡張型心筋症の約10-25%が メンデルの方式に従うが、残りの大部分は家族歴がないか、家族性でもメンデルの方式に従わない孤発性である。遺伝的素因以外で重要と考えられている病因の一つがウイルス性心筋炎であるが、一方で、原因が不明な症例も数多く存在する。そこで、本研究では、次世代シークエンサー等の遺伝子解析技術を用いて高次のゲノム解析を駆使することで、未だ原因が不明な拡張型心筋症の発症メカニズムを解明を目指すと共に、拡張型心筋症に対する新たな治療法・創薬ターゲットの開発に展開を目的とした。孤発性の拡張型心筋症の患者の心筋組織とそれ以外の組織について、次世代シークエンサーを用いて一塩基多型や非コードRNA、メチル化の比較検討を行なうための、背景情報の収集とターゲット遺伝子と予想される遺伝子の予備的解析を検討した。解析データを効率よる処理するため、バイオインフォマティクスによる解析を進めた。この手法を、拡張型心筋症に応用することで、未だ原因不明の拡張型心筋症の新規治療法の開発や創薬開発が加速されることが期待される。