研究課題/領域番号 |
24659632
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
澤 芳樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00243220)
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研究分担者 |
西 宏之 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00529208)
吉川 泰司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40570594)
宮川 繁 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70544237)
福嶌 五月 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80596867)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 再生医学 / 核酸 |
研究概要 |
本研究は、重症心不全左心室の臨床検体を用いてmicroRNAの発現を網羅的に解析し、組織所見や臨床経過との相関を検討することにより、重症心不全の発症機序に関わる特異的microRNAを見出すとともに、重症心不全の核酸バイオマーカーを探索する。さらに重症心不全に特異的に強発現するmicroRNAに対するantagomirを様々な動物モデルに投与しその核酸医薬としての治療効果を検討することを目的としている。人工心臓装着術及び心臓移植の際に採取した重症不全心の左心室心筋(n=15)よりRNAを抽出し、同一個体における人工心臓装着術および心臓移植術時の心筋のmicroRNA発現をMicroRNA arrayを用いて網羅的に解析した。結果、人工心臓補助中に発現が顕著に変化したmicroRNAを12種見出したため、Real-time PCRにて定量的に解析中である。また、重症心不全患者群の血清を採取しRNAを抽出することに成功したものの、血清中に恒常的に発現しているmicroRNAが明らかでないため正常人の血清を用いて対照となりうる血清microRNAを検出することとした。結果miR-16およびU6の発現が向上であることを見出し、これを対照とし重症心不全患者の血清に特異的に発現するmicroRNAを探索中である。開発する核酸医薬の対照となる疾患は遺伝子発現異常が指摘される拡張型心筋症が最もふさわしいものと考えられる。しかしながら拡張型心筋症の動物モデルは限られており、本研究に使えるか検証する必要がある。まずd-sarcroglycanのノックアウトハムスターの自然予後を検討したところ、全ての個体で生後20週より生理学的、組織学的に拡張型心筋症様の病態を呈することがわかった。また、臨床応用を考える上で重要な大動物実験については、d-sarcroglycanノックアウトブタを開発中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、平成24年度から25年度にかけて、「ヒト左心室検体を用いた重症心不全に関わるmicroRNAの探索」を行う予定であったが、今のところ人工心臓装着術前後のmicroRNA発現の変化を捉えるところまで進んだ。今後その他の因子(組織学的所見や生理学的検査所見)との相関を検証することで絞り込むとともに、正常心筋を入手し、人工心臓装着術前後の変化が持つ意義を検討する必要がある。また、同時に平成24年度から25年度にかけて、「ヒト重症心不全患者の血清を用いた新規バイオマーカーの探索」を行う予定であったが、ヒト血清における内因性対照となるmicroRNA候補を見出すことに成功し、また人工心臓装着術前後の血清を採取し、RNAを抽出するところまで進んでいる。さらに、平成24年度後半から26年度にかけて、「心筋症モデルを用いた核酸医薬の開発」を行う予定であったが、本核酸医薬の最も適切な対象疾患は拡張型心筋症であると考え、現在その動物モデルの検証、開発を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
「ヒト左心室検体を用いた重症心不全に関わるmicroRNAの探索」については、見出した重症心不全特異的microRNAの生物学的意義を検証することに焦点をあてる。これには、正常心筋を入手することが必要であり、米国からの購入を考えている。これを用いて、分子生物学的、免疫組織学的手法を用いて、microRNAの意義を見出す。 「ヒト重症心不全患者の血清を用いた新規バイオマーカーの探索」については、上記研究にて見出した特異的microRNAを中心にReal-time PCRを用いて、血清中のmicroRNAの発現を定量化することで、新規核酸バイオマーカーを探索する。 「心筋症モデルを用いた核酸医薬の開発」を行う予定であったが、本核酸医薬の最も適切な対象疾患は拡張型心筋症であると考えている。すでに、d-sarcroglycanのノックアウトハムスターの自然予後を検討しており、このモデルが小動物でのPOC試験に適すると考えている。また、その他のモデルとして臨床応用を考える上では大動物モデルは欠くことができず、このため、明治大学農学部の長嶋比呂志教授とd-sarcroglycanノックアウトブタを開発することとする。この世界初のモデルは核酸医薬開発のためだけでなく、上記「重症心不全に関わるmicroRNAの探索」あるいは「ヒト重症心不全患者の血清を用いた新規バイオマーカーの探索」の検証にも用いる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
microRNAの検出に用いるprimerを含めた試薬、あるいは組織学的検証に必要な試薬に研究費の大半を使用したいと考えている。また、実験動物の購入にも使用したいと考えている。研究成果を専門学術集会(米国心臓学会や日本国内の主要学会)にて発表し、意見交換することにも、研究費を使用したいと考えている。
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