研究実績の概要 |
私たちは、肺癌同所性移植モデル(臨床の肺癌に酷似した転移様式を持つ)と小動物用PET/CT装置を用い(犠牲死せずに治療効果を判定する)、抗癌剤の効果の異なる腫瘍を選択し、次世代シークエンサーを使用し、網羅的な遺伝子発現解析により抗癌剤効果予測候補分子を同定するシステムをつくることを目的とした。肺癌細胞株Ma44-3を同所性移植し、PET/CTを施行し、PET/CTの腫瘍量(相関係数0.7621)、SUVmax(相関係数0.8259)が切除材料の腫瘍径と強く相関することを示した。さらに、抗癌剤CDDPを投与群(7mg/kgbody, n=3)と非投与群(n=3)と比較して、投与群でPET/CTの腫瘍量(day 8:5.43±2.08 vs. 9.6±4.2 mm3, day 13: 6.76±3.4 vs. 53.8±24.4 mm3, P=0.03)、SUVmax (day 8: 0.469±0.08 vs. 0.641±0.03, P=0.02, day 13: 0.499±0.13 vs. 1.233±0.14, P=0.003)が減少することを報告した。肺癌同所性移植モデルで小動物用PET/CT装置を用い、犠牲死せずに治療効果を判定することが可能であることを示した。Ma44-3以外の肺癌細胞株のモデルを作成した。A549, FT821, PC-9(egfr遺伝子の異常あり)の3種類の肺癌細胞株について、同所性移植モデルを作成し、CTにて腫瘍量を測定した。A549は抗癌剤CDDP投与にて、抗腫瘍効果を認めなかった。FT821は有意な抗腫瘍効果を認めた。PC-9は腫瘍効果を認めたが、有意な差ではなかった。PC-9はerlotinibに対して、有意な抗腫瘍効果を認めた。A549, FT821はerlotinibに対して抗腫瘍効果を認めなかった。Ma44-3とFT821モデルは、CDDPに感受性がある腫瘍で、A549モデルは、抵抗性の腫瘍と考えられる。egfr遺伝子の異常あるPC-9はerlotinibに感受性がある腫瘍で、A549とFT821モデルは、抵抗性の腫瘍と考えられる。
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