研究実績の概要 |
ポルフィゾームナノ粒子に全身投与による気管支鏡下での光温熱治療が、早期の肺癌に対して有効であるとの仮説のもと、大小の動物実験モデル上で検証し、この治療コンセプトの妥当性と、臨床応用への可能性について研究を進めた。またすでに臨床において全身投与が認められているインドシアニングリーン(以下ICG) を腫瘍に局所注入し、これを吸光する近赤外線レーザーを照射して光温熱効果についても検証した。 試験管内実験では、各肺癌細胞株を加熱し死滅するまでの温度設定と加熱時間について明らかにした。また、吸光物質となるPorphysomes及び ICG濃度とレーザー出力・加熱温度との関係を明らかにした。ヌードマウスヒト肺癌ゼノグラフトモデルを用いた研究では、 A549, H460, H520をマウスのの皮下および肺内に生着・増殖せしめた。皮下モデルを用いた実験では、腫瘍が5mm の大きさに増殖した時点で ICG を腫瘍に局注し、780nm 近赤外線レーサーを500mW (class 3)を照射し、腫瘍局所の目的設定温度までの温度上昇を確認した。経時的に経過観察し、in-vivo環境での腫瘍の死滅を確認した。Porphysomesを用いた群では、尾静脈から20mg/kg相当のポルフィゾームを静脈し、経時的に肺癌へのポルフィゾーム集積を確認した。新鮮な切除組織にClass 3レーザーを照射して腫瘍を死滅させる摂氏57度超まで加熱できることを確認した。結果、腫瘍が選択的に加熱され腫瘍が死滅することをNADH enzyme activity assayにて確認した。 以上のように光増感物質と近赤外線レーザー光の照射によって光増感物質の存在部位のみを選択的に加熱できること、結果として腫瘍が死滅することを確認した。この治療コンセプトを応用した悪性腫瘍に対する光温熱療法は、今後、臨床応用に向けて準備を進める。
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