ブレブ発生機序は未だ未解明であり、ブレブを形成する炎症の原因は宿主のストレスによる免疫能低下がもたらす常在病原体の再賦活化である可能性を推察し、今回自然気胸の発症原因となり得るブレブ組織に特異的な病原体の同定を目的とし研究を行った。 自然気胸手術の際に切除された部分切除肺のブロックより、ブレブ直下の肺実質およびブレブ直下以外の非病変正常肺部位からのサンプリングを行い、DNA・RNA抽出を行ったのち網羅的な遺伝子検索を行った。網羅的遺伝子解析は、東京医科歯科大学難治疾患研究所が開発した呼吸器系疾患系に対する高感度網羅的病原体検索法を用いた。今回の研究期間中集積された10例(正常肺部10例、ブレブ部10例の計20部位)を検索した。網羅的に検索した病原体群は単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)・単純ヘルペスウイルス2(HSV-2)・ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)・ヒトヘルペスウイルス7(HHV-7)・BKウイルス(BKV)・JCウイルス(JCV)・エプスタインバールウイルス(EBV)・水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)・parvovirus B19・アデノウイルス(ADV)・B型肝炎ウイルス(HBV)・サイトメガロウイルス(CMV)/Mycoplasma・TT型肝炎ウイルス(TTV)を検索した。 結果は、ブレブ部よりHHV-6が8例・HHV-7が6例・EBVが1例・parvovirus B19が3例・TTVが9例検出された。しかし、検出されたウイルスはparvovirus B19を除き常在性のあるウイルスであり、それぞれ正常肺部からも検出されており、特にHHV-6・HHV-7・TTVは通常、肺組織(正常肺組織)から頻出されることから、現時点でこれらの病原体のブレブ形成との関連性は不明である。結論として、自然気胸の発症原因となりうるブレブ組織に特異的な病原体の同定はできなかった。
|