研究課題
本研究は、細胞外マトリックスタンパクであるテネイシンCが大動脈解離の阻止因子であり、ヒトにおいて大動脈解離の好発部位でテネイシンCの発現レベルが大きく変化するとの研究代表者の知見に基づくものである。大動脈の発生段階で追跡したところ、鰓弓動脈の形成と消失に伴いテネイシンCの発現パターンはダイナミックに変化するが、細胞起源による明らかな発現量の差は認められなかった。また、異なる起源の細胞集団が接する境界領域でもテネイシンC発現パターンには明瞭な境界を認めなかった。これらの知見から、少なくとも発生段階の大動脈ではテネイシンCの発現量には大きな差はないと考えられた。生体マウスの大動脈に液性ストレスおよび機械的ストレスをかけるモデルを開発し、テネイシンCの発現パターンを検討した。ヒト大動脈解離の好発部位である左鎖骨下付着部位付近で、近位部(大動脈弓部)では非常に強いテネイシンCの発現を認めたが、遠位部(下行大動脈)での発現は低く、その間には明瞭な境界が認められた。境界部をさらに詳細に検討したところ、発現の高い部位と低い部位が大動脈長軸に沿って螺旋状に分布していることが認められた。このパターンは、既報による大動脈壁ストレインと良く一致していることから、発生起源よりむしろ機械的ストレスのパターンによりテネイシンCの発現が制御されている可能性が高いと考えられた。
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Scientific Reports
巻: 4 ページ: 4051:1-10
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Circulation
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