研究概要 |
一人の患者から樹立した異なった形態と増殖能を持つ4つのクローンの腫瘍形成を動物実験により確認した。これによりin vitroでの増殖速度と同様に腫瘍形成能に差が見られた。以上より脳腫瘍には悪性度の異なった細胞群が存在することが証明出来た。 さらにcDNA arrayを用いてクローンの表現型の差に関与している標的遺伝子を網羅的に検索した。これにより、IGFBP7とCollagen1A1の表現パターンがin vitro, in vivoでの性格に合致した。この二つの遺伝子が、脳腫瘍の多様性を形成するにあたりなんらかの役割を担っているものと推察された。 後者のCollagen1A1を薬物的に阻害する事により、同遺伝子を発現しているクローンの増殖は抑制された。現在、そのメカニズムに関して解析を進めている所であり、IGFBP7とCollagen1A1と脳腫瘍の発生メカニズムの解明を目的とした新たな研究費を獲得出来たので更に研究を進める(新年度科研費萌芽)。当初の研究計画ではクローン間の薬剤感受性の差異をEGFR阻害剤とSmad, Stat , もしくはmTOR pathwayと予測していたがCollagen1A1阻害のメカニズムの解明へ若干変更を加えた。 Collagen1A1およびIGFBP7の発現と脳腫瘍の悪性度および患者予後の関連を研究する為に、岐阜大学脳神経外科にて治療し、病理組織からIGFBP7とCollagen1A1の発現を調べ、経過観察されている患者の中から治療予後の判定が可能か否かを現在模索中である。 以上の研究成果の概要は2013年米国がん学会で招待演者としてシンポジウムでの発表の機会が与えられた。現在、成果の一部を論文投稿中である。
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