研究課題/領域番号 |
24659650
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
有田 英之 独立行政法人国立がん研究センター, 中央病院, がん専門修練医 (60570570)
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研究分担者 |
木下 学 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40448064)
吉岡 芳親 大阪大学, 学内共同利用施設等, 教授 (00174897)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | グリオーマ / IDH1 |
研究概要 |
神経膠腫発生において比較的初期のイベントと考えられているIDH1遺伝子変異がどのように神経膠腫発生に関与するか検討すべく、ヒト膠芽腫細胞株(U87MG)に変異型IDH1(R132H)遺伝子を導入した。薬物スクリーニングを行い、恒常的な発現を、変異型IDH1タンパク二対する抗体を用いたWestern blot法で確認した。 さらに、我々は240例の神経膠腫の遺伝子解析から、IDH1/2変異をもつ神経膠腫のうち1p19q完全共欠失をもつ腫瘍では高頻度にhTERT遺伝子のプロモーター領域の点変異をもつことを明らかにした。がんの無限の細胞増殖にはテロメアの維持・延長が必要とされ、神経膠腫においてもテロメラーゼ依存性および非依存性の延長(ALT: alternative lengthening of telomere)それぞれが報告されている。近年、IDH変異陽性だが1p19q完全共欠失がなく、TP53変異をもつ神経膠腫は高頻度にテロメアーゼ非依存性のテロメア延長機構であるに関わるATRX遺伝子の変異をもつことが報告されている。しかしそれ以外のIDH変異をもつ腫瘍が発生においてどのようにテロメアを維持しているかは明らかでなかった。テロメラーゼ構成する逆転写酵素であるhTERTの発現量とテロメラーゼ活性化は正の相関があるとされることから、我々の知見は、IDH1/2変異および1p19q共欠失をもつ神経膠腫がどのように、神経膠腫発生に必須と考えられるテロメアを維持するかを明らかにしたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IDH変異を伴う神経膠腫において細胞増殖に必須であるテロメア維持の機序を明らかにした。本研究計画での目標である、IDH1遺伝子変異glioma発生モデルにおいて腫瘍発生に必要な遺伝子変異を明らかにしたと考えられ、おおむね順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
変異型 IDH1 にくわえ、活性型 Akt、H-RasV12、Tp53 欠失それぞれを含む・含まない組み合わせで導入を行い、マウスモデルを作成する。計画に基づき、どの組み合わせでグリオーマが発生するかおよびMRSで2-HGモニタリングを行う。2-HGの増加がMRSで確認された場合は病理学的検討をおこなう。さらに前年度の成果に基づきhTERT遺伝子の変化をDirect-sequence法およびRT-PCR法を用いた発現評価をおこない変異型IDHと多段階発癌モデルにおける関わりを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
画像データ保存用設備およびin vitro実験試薬は必要時に順次購入中のため、発生した次年度繰り越し使用予定研究費はこれに充当する予定である。また、翌年度研究費は(1)実験動物および動物実験器具・試薬 (2)細胞培養および遺伝子解析試薬(3)2-HGモニタリングを含めた画像技術に関する情報収集のため国際核磁気共鳴医学会への参加旅費(4)MRI撮影実験費用、に充当する予定である。
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