研究課題/領域番号 |
24659652
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中溝 玲 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80529800)
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研究分担者 |
秦 暢宏 九州大学, 大学病院, 助教 (10596034)
天野 敏之 九州大学, 大学病院, 助教 (70448413)
吉川 雄一郎 九州大学, 大学病院, 助教 (80423515)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 脳動脈瘤 / マクロファージ / micro RNA |
研究概要 |
間葉系幹細胞由来のexosomal microRNAが、マクロファージのMMP-9分泌能に及ぼす影響を解明するため、以下の実験を行った。 1)U937単球系細胞を100nMフォルボールエステル(PMA)で分化させて、培養マクロファージとして用いた。ELISA法により、PMA刺激24時間後の上清中のMMP-9の発現が有意に上昇していることを確認した。 2)U937細胞をRPMI1640内で一定期間培養し、得られた細胞を用いてqRT-PCRを行った。PMA刺激24時間後、U937細胞内におけるmiRNA-21の発現が有意に上昇していた。また、上清からexosomeを単離しqRT-PCRを行ったところ、細胞内と同様にexosome内でもmiRNA-21の発現が有意に上昇していた。 3)一方、間葉系幹細胞をMSCGM-CDTM内で一定期間培養し、得られた間葉系幹細胞ならびに間葉系幹細胞から単離したexosomeを用いてqRT-PCRを行ったところ、細胞内ならびにexosome内においてmiRNA-145の有意な発現の上昇を認めた。 4)無処理の培養液(MSCGM-CDTM)に間葉系幹細胞培養後の上清(conditioned medium)を1:0(control), 1:10-3, 1:10-2, 1:10-1 ,1:1, 0:1の割合で混ぜ,U937細胞の培地とした。Conditioned mediumは、細胞がconfluentとなり72時間経過した時点で採取した。U937細胞を100nMのPMAで刺激し、上清中のMMP-9の分泌をELISA法で測定した。Conditioned mediumのみでU937細胞の分化培養を行った群では,PMA刺激24時間後のMMP-9の発現がcontrol群と比べ1/3に抑制されていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養マクロファージU937の細胞内およびexosome内にはMMP-9の分泌亢進に関わるmiRNA-21が有意に発現していること、間葉系幹細胞の細胞内およびexosome内にはMMP-9の分泌抑制に関わるmiRNA-145が有意に発現していることが明らかとなった。さらに、間葉系幹細胞から分泌されるexosomeを含む上清を用いてマクロファージを培養することにより、マクロファージから分泌されるMMP-9が有意に抑制されることを明らかにした。以上の結果より,研究は概ね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
miRNA-21とmiRNA-145によるMMP-9分泌調節機構について検討する。siRNAを用いた両miRNAの機能抑制ならびに、miRNAプラスミドによる機能強発現がマクロファージからのMMP-9分泌能に及ぼす影響を詳細に検討する。また、間葉系幹細胞からexosome内へと分泌されたmiRNA-145が実際にマクロファージ細胞内へと取り込まれることを証明する。これらが証明されれば、ラット脳動脈瘤モデルを作成しmiRNA-145強発現間葉系幹細胞を用いた、miRNAをターゲットとする新たな脳動脈瘤治療法の解明に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は主に、miRNA-21とmiRNA-145のsiRNAのデザインと作成ならびにmiRNAプラスミドのデザインと作成に使用する。また、実験に用いる間葉系幹細胞は継代回数が少ないものを用いる必要があるため、間葉系幹細胞を適宜購入する。MMP-9の発現の検討は、ELISA法やWestern blotting、quantitative real-time PCR、免疫染色によって行うため、これらの試薬購入に使用する。in vitroの実験終了後に予算的に可能であれば、in vivoの実験を行うため、ラットの購入、飼育費用に用いる。
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