研究概要 |
研究代表者らは、最近elongin BCをリガンドとするBCボックス蛋白群が神経幹細胞のみならず多能性幹細胞の神経分化制御に関わっており、elongin BCと結合するアミノ酸配列であるBCボックスモチーフ構造[(A,P,S,T)LXXX (A,C) XXX(A,I,L,V)]が、神経分化ドメインであることを突き止めた。BCボックスモチーフ構造は、哺乳類の細胞のみならず、ウイルスにも認められることから、生物進化の過程において保存された重要な構造であると考えられる。BCボックス蛋白群は、elongin BCと結合するモチーフ(BC box motif)を持つことからそう呼ばれ、神経細胞には様々な種類があって、BCボックスモチーフの構造異同により、分化する神経細胞の種類が異なり、分化誘導活性も異なる。今年度の本研究では、SOCS7およびSOCS4では幹細胞からChAT陽性のモーターニューロンへ分化誘導すること、TH陽性のドーパミンニューロンは、SOCS1-3,4,5, ASB3, WSB2, VHL由来のペプチドにより分化誘導されること、GABA陽性のニューロンは、主にSOCS5、VHL由来のペプチドにより分化誘導されること、グルタミン酸陽性のニューロンは、SOCS1,3,6,VHL由来のペプチドにより分化誘導されること、更にロドプシン陽性細胞は、主にSOCS5, VHL由来のペプチドにより分化誘導されることが判明した。多能性幹細胞がどのようにして分化方向や分化誘導活性が決定されるのかについては、ユビキチン/プロテアソーム系によるSTAT3発現の抑制が関与していることが明らかにはなり、また最近の研究成果でプロモーターアレイ解析により種々のBCボックス蛋白が分化誘導される種々のニューロンの特異的蛋白の遺伝子プロモーターに直接関わることが明らかになってきた。
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