研究実績の概要 |
研究代表者らは、elongin BCをリガンドとするBCボックス蛋白群が神経幹細胞のみならず多能性間葉系幹細胞の神経分化制御に関わっており、elongin BCと結合するアミノ酸配列であるBCボックスモチーフ構造[(A,P,S,T)LXXX (A,C) XXX(A,I,L,V)]が、神経分化ドメインであることを突き止めた。BCボックスモチーフ構造は、哺乳類の細胞のみならず、ウイルスにも認められることから、生物進化の過程において保存された重要な構造であると考えられる。BCボックス蛋白群は、elongin BCと結合するモチーフ(BC box motif)を持つことからそう呼ばれるが、転写因子Stat3を制御するSOCS-box群は、elongin BCと結合してSBC複合体を形成するとStat3の発現を制御し多能性幹細胞を神経細胞へ分化誘導することが示唆されていた。26年度には、多能性間葉系幹細胞の細胞内へBC-boxモチーフペプチドを導入した際に様々な種類の神経細胞への分化が何故引き起こされるのかを検討した。その結果、BC-boxモチーフペプチドを細胞内へ導入するとJAK/STAT系が抑制されることがWestern blottingの結果から明らかとなり、この反応はJAK2の発現をまず制御することから始まることが示唆された。次に、VHL、SOCS5、SOCS7由来の3種類のBC-boxモチーフペプチドを多能性間葉性幹細胞へ導入して、神経マーカーのプロモーターとの関連を網羅的Chipアッセイにて調べてみると3種類のBC-box モチーフペプチドはそれぞれ特異的な神経細胞への分化に直接関わっていることが明らかとなった。また、elongin BCに結合して機能するBC-box モチーフペプチドの最小数のアミノ酸配列を検討し、7個のアミノ酸配列が最小であることが判明した。
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