研究課題/領域番号 |
24659658
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
宮武 伸一 大阪医科大学, 医学部, 教授 (90209916)
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研究分担者 |
佐々木 良平 神戸大学, 医学部附属病院, 教授 (30346267)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 脳放射線壊死 / VEGF / HIF-1 a / CXCL12 / CXCR4 / 炎症 / 血管新生 |
研究概要 |
脳放射線壊死の病態を解明し、その発症そのものを予防する治療法の開発を目的に本研究を行っている。すでに壊死巣除去術を行った壊死組織の病理組織より、虚血性転写因子HIF-1 alpha;や炎症性サイトカインであるCXCL12,その受容体であるCXCR4の高発現を確認している。 平成24年度はHIF-1 alpha;が下流のVEGFを誘導し血管新生を誘導し、反応性アストロサイトがCXCL12を発現することにより、その受容体CXCR4を発現するマイクログリアおよびマクロファージが壊死巣周囲に集簇し、このCXCR4を発現する細胞群が炎症性サイトカイン(IL-1a, TNF-a, IL-6, NF-kB)を放出し、炎症がさらに波及し更なる脳浮腫の増悪を惹起することを確認した。 さらにはpreliminaryではあるが、SD ラット脳に動物医療用X線照射装置を用いて60Gy のX線を照射し、2-3ヵ月後にはヒト症候性脳照射線壊死に類似した組織像を示す、脳放射線壊死モデルが作成可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度には以下の2つの計画を骨子とした研究を行うことを交付申請書に記載している。 ①当施設において壊死巣除去手術を行った25例におよぶ病理標本による発現蛋白の検討と発現する細胞の同定 ②ラット脳内および背髄照射による放射線壊死モデルの作成 ①に関しては、摘出標本を基に、壊死巣周囲の反応性アストロサイトがVEGFを産生しており、ここに血漿成分が漏出して放射線壊死における脳浮腫が惹起される機構を解明した。同様の手法でHIF-1およびCXCL12,CXCR4 の免疫組織染色を行い、HIF-1が下流のVEGFを誘導し血管新生を誘導し、反応性アストロサイトがCXCL12を発現することにより、その受容体CXCR4を発現するマイクログリアおよびマクロファージが壊死巣周囲に集簇し、炎症が波及し更なる脳浮腫の増悪を惹起するという仮説が実証できた。 ②に関しては、Spring 8による放射線照射や、京大原子炉実験所でのCo照射では再現性のある動物モデルが作成できなかったが、大阪府立大学獣医学科での動物医療用X線照射装置を用いて60Gy のX線をラット脳に照射し、2-3ヵ月後にはヒト症候性脳照射線壊死に類似した組織像を示す、脳放射線壊死モデルが作成可能であることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
上記モデルにおけるHIF-1およびCXCL12-CXCR4のantagonist もしくはinhibitor による放射線壊死の治療および予防研究 ヒト脳放射線壊死の病理組織の検討からはHIF-1 alpha;およびCXCL12-CXCR4の壊死巣周囲脳での高発現が確認できた。さらなる症例の検索でも普遍的にこれら分子の高発現を証明できた。また脳放射線壊死モデルが確立できそうであり、ベバシズマブ以外の有効な治療法もしくは予防法の検索を行う。この作業は研究代表者および大学院生が行う。 まずはラット脳にX線60Gyを照射し、VEGF,HIF-1, CXCL12, CXCR4, 炎症性サイトカインがどの時期に発現するかを調査する。 各分子の発現時期に HIF-1阻害候補手段としてはPX-866(Wartmannin誘導体), PX-478, Echinomycin, Doxorubicin (DNA-intercalator), Bortezomib (proteasome阻害剤)等をHIF-1の阻害剤として考えている。CXCL12-CXCR4 系の阻害薬としてはPlerixafor (CXCR4 antagonist)を一つの候補と考えており、このほかNSAIDやCox2 inhibitor も非特異的な炎症の抑制も治療候補薬剤と考えている。これら薬剤はおそらく放射線壊死の治療より、その予防に効果を発揮するものと考えられ、その投与量、時期の最適化は試行錯誤を繰り返すことが必要と予想している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は照射実験の費用に若干の遅れが生じたので、平成24年度の未使用額も含め、実験動物の購入および、大阪府立大学の施設使用料、各種抗体の購入に研究費を充当する
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