研究概要 |
悪性脳腫瘍に対する近年の高線量放射線治療の進歩はその治療成績の向上に寄与し、長期生存例の割合を増やしているが、その一方で遅発性脳放射線壊死を生じる症例に遭遇する機会も着実に増えてきている。本研究では遅発性脳放射線壊死という診断でnecrotomy を行った、臨床組織標本の解析を通じて、本病態の機序を解明すると共に、有効な治療法を探求することを目的とする。 大阪医科大学において、脳放射線壊死の壊死巣除去術を行った、手術摘出標本を用いて、病理組織学的検索を行ったところ、放射線治療の対象疾患、組織型や加療に用いた放射線治療のmodality の種類を問わず、血管新生が普遍的に認められた。 免疫組織染色の結果、この血管新生にはVEGF、PDGF、HIF-1α、CXCL12、CXCR4等の発現が血管新生や炎症に関与し、脳放射線壊死の病態に深くかかわることが判明した。ことに、放射線治療により、血流障害から脳虚血が発生する。これにより、虚血巣周囲にHIF-1αが産生される。この刺激から反応性アストロサイトがVEGF,CXCL12を発現し、ミクログリアがCXCR4やIL-1, IL-6, TNF-alphaのような炎症性サイトカインを分泌し、両者があいまって、脳放射線壊死の病態に深くかかわることが判明した。また、血管内皮細胞はPDGF-Rを発現し、アストロサイトやミクログリアが産生するPDGFにより血管新生が惹起されることも判明した。
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