研究概要 |
CD133は、現在最も有用な脳腫瘍幹細胞マーカーであるが、その生理学的機能の全容は明らかではない。CD133の機能を解明するために、CD133と結合する蛋白質の同定を試みた。これまで、アフィニティー精製法や酵母two-hybrid法などで同定したCD133結合候補蛋白質の中で、その機能に関与する可能性が高いと推測されたものについて、内在性蛋白質のレベルでCD133と結合しうるかを検討した。ヒト胎児性がん由来細胞NTERA-2細胞を用いて内在性のCD133を免疫沈降し、CD133免疫沈降物にSRSF3(別名SRp20)、calnexin、Grp78、Fascinなどが含まれているかを見たが、内在性蛋白質のレベルでの結合は確認できなかった。一方、CD133の機能の手がかりをつかむため、ヒト胎児性がん由来細胞NTERA-2細胞でCD133の発現をRNA干渉法でノックダウンしたところ、Epithelial Splicing Regulatory Protein 1 (ESRP1)の発現が上昇することを認めた。ESRP1は、上皮特異的に発現するRNAスプライシングに関与する分子であり、このことは、CD133が、NTERA-2細胞の間葉-上皮転換(Mesenchymal-Epithelial Transition, MET)を阻害することで、NTERA-2細胞の未分化能の維持に貢献している可能性を示唆した。
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