研究課題
前年度に、2型コラーゲンの発現を上昇させ、基質合成を促進し、軟骨組織を再生誘導する機能を持った化合物に絞ったので、今年度は同定した化合物の関節軟骨再生誘導の分子メカニズムを詳細に解析した。同定した化合物はマウス関節軟骨細胞、ヒト関節軟骨細胞を再分化させ、2型コラーゲンmRNA発現を上げ、軟骨基質合成を積極的に行うことができることが示された。今年度は変形性膝関節症モデルマウスを用いた関節軟骨再生誘導化合物の治療効果の検討を行った。用いた変形性膝関節症モデルマウス(Osteoarthritis Cartilage 13:632,2005)は、8週齢雄のマウスの内側側副靱帯の切離と内側半月板の切除を施行するもので、ヒトと同様に脛骨内側中央部の関節軟骨荷重部に膝OAが経時的に発症・進展することが分かっている。OA 誘発手術後8週でほぼすべての野生型マウスの膝にOAが発症していることを確認しているので、術直後と術後4Wより、野生型マウスの膝関節腔内に前年度に同定し、最適化した濃度の化合物を局所投与し、膝OAに対する治療効果、発症の進展の影響を組織学的解析で検討した。組織学的評価基準(Osteoarthritis Cartilage 14:13,2006)で評価した結果、化合物投与群では非投与群(生理食塩水投与)に比べて、OAの病態進行が抑えられていることが示された。また、COL10A1、MMP-13、VEGF など肥大分化、石灰化マーカーの発現を免疫組織化学染色法により検出した結果、化合物投与群ではこれらのマーカーの発現が非投与群に比べて発現が弱く、軟骨組織破壊が抑制されていることが示された。
1: 当初の計画以上に進展している
変形性関節症モデルマウスは既に確立されて、手術手技も安定しており、同定した化合物を投与する実験の準備ができていたため、迅速に進めることができた。さらに評価方法や組織学的解析のツールが揃っていたので、当初の計画より早めに結果を得ることができた。
臨床応用を目指した治療薬の開発のため、同定した化合物の直接的ターゲット分子の探索を行う。分子メカニズムを明らかにするため、トランスクリプトームおよびプロテオーム解析を行う。軟骨細胞に化合物を曝露し、Total RNAを回収後、cDNAマイクロアレイを行い、遺伝子発現プロファイルを取得する。同様に、化合物を曝露した細胞からタンパク質を抽出し、プロテインアレイ、二次元電気泳動および液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)を用いて、タンパク質発現プロファイルを取得する。これらの解析によって得られる情報は軟骨分化のメカニズム、関節軟骨に必須の遺伝子、タンパクを知る鍵にもなることが予想される。
今年度までの解析であるマウス飼育や組織解析は既に自施設で行えるため、予定よりも実験物品費の支出が少なかった。分子メカニズムを明らかにするため、トランスクリプトームおよびプロテオーム解析を行う。軟骨細胞に化合物を曝露し、Total RNAを回収後、cDNAマイクロアレイを行い、遺伝子発現プロファイルを取得する。同様に、化合物を曝露した細胞からタンパク質を抽出し、プロテインアレイ、二次元電気泳動および液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)を用いて、タンパク質発現プロファイルを取得する。これらの解析は通常の解析よりも費用がかかるため、前年度分の未使用金を用いていく予定である。
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