研究課題/領域番号 |
24659668
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
本間 雅 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60401072)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / 生体分子 / 生理活性 / 薬理学 / 老化 |
研究概要 |
申請者らは骨芽細胞表面に発現しているRANKL分子は、RANK結合刺激を受容して骨芽細胞内にも種々のシグナルを発生する、双方向のシグナル分子であることを見出した。この骨芽細胞内RANKL逆シグナルは、骨芽細胞の分化・活性化を正に制御している可能性が見出されている。本申請研究は、RANKとRANKLの結合を阻害して破骨細胞の形成を抑制するだけでは無く、同時に骨芽細胞内にRANKL逆シグナルを入力して骨芽細胞の分化を促進する、バイファンクショナルなヒト型モノクローナル抗体を取得することを目標とする。初年度である平成24年度においては、RANKL細胞外ドメインを認識する完全ヒト型抗体を取得するため、ヒト型scFvを提示するファージディスプレイ・ライブラリーを用いてスクリーニングを行った。最終的にはRANKL三量体間を効率的に架橋する抗体を取得するのが目標であるため、RANKL細胞外ドメインに対する結合部位・角度など、複数の条件を適切に満たす必要があると想定される。このような抗体を取得できる可能性を最大化するため、ヒトRANKLに加えマウスRANKL細胞外ドメインに対してもスクリーニングを実施した。その結果、ヒトRANKLのみを認識するscFvが16クローン、マウスRANKLのみを認識するscFvが7クローン、ヒト・マウス双方のRANKLを認識するscFvが2クローンの合計25クローンの取得に成功した。また得られた各クローンに関しては、臨床応用されている中和抗体の多くがIgG2型であることを考慮して、ヒトIgG2への組み替えを行った。これらのクローンに関しては、現在CHO-K1細胞を用いて恒常的発現系を構築中であり、組み替え抗体が取得されたものから、順次細胞系および動物モデルによる評価を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度には、完全ヒト型抗RANKL抗体の取得を目標としたスクリーニングを実施し、合計25クローンのRANKL細胞外ドメインを認識するscFvの取得に成功し、これらの分子に関して、全長の完全ヒト型IgG2への組み替え作業も完了した。哺乳類細胞を用いた発現系の構築も順調に進んでおり、基本的に当初計画した通りのペースで進行している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に取得した各抗体分子に関し、まずin vitro骨芽細胞培養系を用いてRANKL逆シグナル入力活性の評価を行う。RANKL逆シグナル入力能の評価としては、Akt/PI3K/mTORC1シグナル経路の活性化を指標として用いる。さらに、骨芽細胞の分化・活性化を評価する指標としては、ALPおよびosteocalcinのmRNAレベルでの発現量上昇を定量的PCR手法によって評価する。また、von Kossa染色を用いて骨形成能の評価も実施する。 動物モデルを用いた薬物動態および薬効の評価に関しては、閉経後骨粗鬆症モデルとして汎用される卵巣摘出マウスを採用する。マウスモデルに対して抗体を投与した後、適切な期間飼育し、非脱灰薄切標本を作成して骨形態計測を行う。必要に応じてTRAP染色によって破骨細胞を、ALP染色を行って骨芽細胞を染色する。さらに、骨内部の微細構造に関する情報をより詳細に取得するためμCTを用いた非破壊解析も併せて行う。以上の検討により、RANKとの結合を阻害して破骨細胞の形成を抑制するだけでは無く、同時に骨芽細胞内にRANKL逆シグナルを入力して骨芽細胞の分化を促進する、バイファンクショナルなヒト型モノクローナル抗体を取得する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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