申請者らは骨芽細胞表面に発現しているRANKL分子は、RANK結合刺激を受容して骨芽細胞内にもシグナルを発生する、双方向性シグナル分子であることを見出した。この骨芽細胞内RANKL逆シグナルは、骨芽細胞の分化・活性化を正に制御している可能性が見出されている。本申請研究は、RANKとRANKLの結合を阻害して破骨細胞の形成を抑制するだけでは無く、同時に骨芽細胞内にRANKL逆シグナルを入力して骨芽細胞の分化を促進する、バイファンクショナルなヒト型モノクローナル抗体を取得することを目標とする。平成24年度においては、ヒト型scFvを提示するファージディスプレイ・ライブラリーを用いてスクリーニングを行い、マウスおよびヒトRANKL細胞外ドメインを認識するscFvクローンを複数取得した。本年度は、これらのクローンに関してC末端側にイソロイシンジッパーを付加することで三量体化した組み替えタンパク質を取得し、RANKL逆シグナル入力能の評価を行った。その結果、5種類のクローンがRANKL骨芽細胞内シグナルを入力可能なものとして同定された。併せて、RANKLシグナル入力による成熟破骨細胞形成に対する阻害効果も評価した結果、2種類のクローンに関して強い成熟破骨細胞形成抑制能が認められた。結果として、骨芽細胞活性化能および成熟破骨細胞形成抑制能の双方を有するscFvクローン1種類の同定に成功した。そこでこのクローンに関し、生体レベルでも期待される作用が観察されるかを、マウスを用いて検証した。scFv組み替えタンパク質を、1日2回腹腔内投与し、投与開始後1週間および2週間時点で血中骨代謝マーカーの値を測定した結果、骨吸収マーカーTRAP5bの低下と骨形成マーカーP1NPの上昇が同時に認められ、生体レベルでも骨吸収の抑制作用と骨形成の促進作用が同時に発現することが明らかとなった
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