研究課題
脊椎椎間板は、椎骨を結合し脊柱を構成する組織であり、その加齢、力学的負荷による変性・損傷は椎間板ヘルニアなどを引き起こし、患者に激痛を与え、日常生活に大きな制限をあたえる。この椎間板の損傷・変性は、栄養血管が少ないこともあり、その治癒力は非常に弱く、再生が困難であり、新しい再生医療技術の発展が望まれている。そのため治療法の開発に向けて基盤となる分子レベルでの研究が急務とされている。しかしながら、椎間板の発生・分化における遺伝子制御機構についてや、これら組織の変性メカニズムは、未だにほとんど不明である。申請者らは、E9.5、10.5、11.5のマウス胚において、遺伝子発現(転写)のスイッチである約1,500個の転写因子・転写コファクターのWhole-mount in situ hybridization (WISH)データベース"EMBRYS" (http://embrys.jp/) を構築し、時空間特異的な発現制御により成り立っている個体発生における、複雑な遺伝子ネットワーク解明の足がかりとなるシステムを作り上げた。このデータベースを基に、腱・靭帯に特異的な遺伝子としてホメオボックス遺伝子であるMohawk (Mkx)を同定し、このMkxが腱の形成に重要な転写因子であることをノックアウトマウスの解析により明らかにしている。本年度はノックアウトマウスの椎間板を電子顕微鏡で解析し、野生型と比較して椎間板線維輪外輪のコラーゲン細線維の径が小さくなっていることを見出した。さらに椎間板の経年的な変化をmicro CT及び組織学的に検討し、野生型と比較してノックアウトマウスは腰椎が変形性脊椎症様の変化を示すこと、椎間板組織の変性が進行することを見出した。以上の結果からMkxは脊椎椎間板線維輪の形成、また椎間板変性に重要な働きを持っている可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
研究において支障はなく、ほぼ計画通りに進めることができた。
Mkxの遺伝子改変マウス由来の線維輪細胞あるいはMkxを過剰発現させた培養細胞系を用いて、Mkxが発現を制御する遺伝子のスクリーニングを行う。取得した候補遺伝子については、ChIPアッセイやルシフェラーゼアッセイによる細胞ベースの実験と、Mkxノックアウトマウス、トランスジェニックマウスを用いた発現解析により、候補遺伝子がMkxの標的遺伝子であるかについて調査する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件)
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