研究課題/領域番号 |
24659670
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
齋藤 直人 信州大学, 医学部, 教授 (80283258)
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研究分担者 |
加藤 博之 信州大学, 医学部, 教授 (40204490)
KIM YOONG AHM 信州大学, 工学部, 准教授 (70362100)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | カーボンファイバー / 骨髄細胞 / 再生医療 / 足場材 / 骨組織再生 |
研究概要 |
平成24年度は、立体構築が可能なナノカーボンファイバーシート(NCF)を作製し、NCFと皮下組織の反応を評価した。また、NCFを実験動物に埋め込んだ組織反応を形態学的に評価した。さらに、NCFが骨形成を促進するメカニズムを、骨芽細胞の石灰形成能促進、ハイドロキシアパタイト凝集と関連付けて考察した。BMPによる骨再生実験において、立体構築したNCFをscaffold に用いることにより、高い細胞接着性と多孔性を示す比表面積の大きなNCFによる構造体が、細胞の侵入、保持、血管の侵入、基質形成などに与える影響を検討した。一方、NCF細胞療法による骨再生用scaffoldとしての有用性を評価した。ラットの大腿骨・脛骨から骨髄細胞を採取し、1週間培養した。この骨髄細胞を回収し、骨形成用培養液を加えて6.0×104cell/mLの濃度に希釈してdishに10mLずつ播種した。2週間培養後に骨髄細胞をdishから剥がして骨髄細胞シートを作成した。NCFインプラントを細胞シートで包み,ラット背部皮下に移植を行った。この実験において、NCF存在下の骨組織関連細胞の分化・増殖、細胞内の遺伝子レベルでの変化、細胞内シグナル系などを解析するための基盤技術を構築した。また、NCF表面における基本的生体反応評価として、培養系における細胞接着の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Scaffoldとして立体構築が可能なNCFの開発、NCFと皮下組織の反応評価、NCFと骨組織の反応評価、サイトカイン療法による骨再生用scaffoldとして最適なNCFの探求などについては、本研究課題の基礎となった研究を発展させる検討を十分に行うことができた。研究初年度として最も力を入れたのは、細胞療法による骨再生用scaffoldとして最適なNCFの探求であり、上記のように基盤となる研究技術の構築に大きな成果をあげることができた。この基盤技術を用いて、来年度以降の生体内および生体外でのNCFをscaffoldとして骨再生技術の開発研究を発展させることが可能であり、順調に進展している。また、NCF存在下の骨組織関連細胞の反応評価も、十分な基盤技術を構築できたと考える。一方、NCF表面における基本的生体反応評価(タンパク質の吸着、血栓形成、補体系活性化)とマクロファージの反応評価は本年度やや遅れており、来年度以降更に力を入れて研究を継続する。
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今後の研究の推進方策 |
ラット皮下に移植したインプラントに形成された異所性骨をCT等で十分な観察を行い、NCFインプラントの骨再生療法の足場材料としての性能を評価する。また、形成された異所性骨を採取して骨形成過程、周囲軟部組織との反応を観察することにより、組織親和性および足場材料としての評価を行う。NCFの繊維径や密度を調整することにより、骨再生に最良なインプラントの探究を行う。NCFに骨形成タンパク質を吸着させること、骨髄細胞を付加することにより、その骨形成能を最大限に引き出す。この際、ラットの背部皮下の異所性骨実験により、骨形成のマーカーであるosteocalcin、alkaline phosphatase、osteopontinなどをELISA、real time PCRなどの手法を用いて定量的に評価する。現在、骨形成能を持った細胞を生体外で培養し、それを生体内に移植することによる骨再生医療しか実現していない。NCFを応用した足場材料に骨髄細胞やBMPなどのサイトカインを加えることにより、生体外での骨形成を達成する新しい骨再生医療技術を開発する。NCFの構造(繊維径、線維密度)、骨髄細胞の濃度・種類(接着細胞、非接着細胞)、サイトカインの種類・濃度などを調整することにより、生体外でより骨へ分化させた組織を創成する。作成した生体外形成骨はmicroCT、組織像、骨形成マーカーの定量により評価する。また、生体外形成骨を骨欠損動物モデルに移植することにより、その修復能および生体親和性・安全性の評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度研究費であるが購入物品の納品日が平成25年度になったため次年度使用額が生じた。 骨髄細胞の採取およびNCFインプラントの移植に使用する動物を購入する。また、骨形成を促すBMPなどのサイトカインや骨形成マーカーであるosteocalcin、alkaline phosphatase、osteopontinなどを測定するための試薬に研究費を使用する予定である.それらの実験を行うための機材・薬品(消耗品)の購入も必要である。NCFインプラントの開発・改良を行うのに際し、材料費・旅費としても研究費を使用する。
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