研究課題/領域番号 |
24659670
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
齋藤 直人 信州大学, 医学部, 教授 (80283258)
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研究分担者 |
加藤 博之 信州大学, 医学部, 教授 (40204490)
KIM YOONG AHM 信州大学, 工学部, 准教授 (70362100)
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キーワード | 再生医療 / 足場材 / 骨組織再生 / ナノカーボンファイバー |
研究概要 |
ナノカーボンのみから構成された足場材であるナノカーボンブロック(NC block)を新規作製し、骨形成能を評価した。まず、骨形成タンパク(BMP)を浸み込ませたさまざまなpore sizeのNC blockをマウス背筋内に埋め込むモデルで骨形成能をCTにより評価し、さらに組織標本を作製して形態学的に評価した。CTではNC block内部まで骨形成を認め、組織学的にもNC blockを構成するナノカーボンファイバーの間に骨組織が入り込んでいる像を示した。これにより、BMPによる骨再生において、多孔質のNC blockがscaffoldとして有効であると考えられた。高い細胞接着性と多孔性を示す比表面積の大きなナノカーボンファイバーによる構造体が、細胞の侵入、保持、血管の侵入、基質形成などに有利に働くことが考えられた。さらに、NC blockが骨形成を促進するメカニズムを、骨芽細胞の石灰形成能促進や細胞内カルシウム濃度の変化、ハイドロキシアパタイト凝集と関連付けて考察した。また、NC block表面の基本的生体反応評価として、培養系における細胞接着の検討を行った。細胞培養用のプラスチックプレートをコントロールに設定し、NC blockとプラスチックプレート上に各種の細胞を培養して経時的にセルカウントを行い、細胞増殖能を評価した。その結果、コントロールに比較してNC block上では、骨芽細胞系cell lineであるMC3T3-e1細胞の増殖が有意に増加していた。このことから、NC blockの骨芽細胞接着性の高さが骨組織再生のscaffoldとして有効性を担うと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
足場材としてのNC blockの開発、NC blockの骨形成能評価、サイトカイン療法による骨再生用足場材としてのNC blockの有用性などについては、その検討を十分に行うことができた。In vitroの実験系において、骨再生用足場材としてのNC blockは優れた骨形成能を示した。また、In vitroの実験系においても、NC blockはコントロールと比較して、優れた細胞接着性を示した。ナノカーボンは陰性に荷電しており、それがカルシウムイオンを引き寄せることにより細胞外基質のカルシウム濃度を上昇させている可能性があり、その検討は今後行う必要がある。また、NC blockはハイドロキシアパタイトを析出させることが示唆されており、それが石灰化誘導に有効に働いている可能性も考えられる。いずれにせよ、NC blockはIn vitro、In vivoの両実験系において、骨形成を促進する可能性が高く、この基盤技術を用いて、生体内および生体外でNC blockを足場材として骨再生技術の開発研究を発展させることができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ラット皮下に移植したNC blockに形成された異所性骨について、CT等で骨密度など十分な観察を行い、NC blockの骨再生療法の足場材料としての性能を評価する。また、形成された異所性骨を採取して骨形成過程、周囲軟部組織との反応を観察することにより、組織親和性および足場材料としての評価を行う。NC blockのpore sizeや密度を調整することにより、骨再生に最良なインプラントの探究を行う。さらにNC blockに骨形成タンパク質を吸着させることにより、その骨形成能を最大限に引き出す。この際、ラットの背部皮下の異所性骨実験と併せ、骨芽細胞系のcell lineであるMC3T3-e1細胞を用いたIn vitroでの骨形成能試験により、骨形成のマーカーであるRunx2、osteocalcin、alkaline phosphatase、osteopontinなどの発現をWestern blot法、real time PCRなどの手法を用いて定量的に評価する。現在、骨形成能を持った細胞を生体外で培養し、それを生体内に移植することによる骨再生医療しか実現していない。NC blockを応用した足場材料にBMPなどのサイトカインを加えることにより、生体外での骨形成を達成する新しい骨再生医療技術を開発する。NC blockの構造(pore size)、骨髄細胞の濃度・種類(骨芽細胞・破骨細胞)、サイトカインの種類・濃度などを調整することにより、生体外でより骨へ分化させた組織を創成する。作成した生体外形成骨はmicroCT、組織像、骨形成マーカーの定量により評価する。また、生体外形成骨を骨欠損動物モデルに移植することにより、その修復能および生体親和性・安全性の評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画で見込んだ額より安価に研究が遂行できたため、次年度使用額が生じた。 平成26年度研究費と合わせて研究に必要な試薬の購入に使用する。
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