研究課題/領域番号 |
24659675
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
戸口田 淳也 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (40273502)
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研究分担者 |
加藤 友久 京都大学, 再生医科学研究所, 講師 (50301247)
池谷 真 京都大学, iPS細胞研究所, 准教授 (20442923)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | iPS細胞 / イヌ / 疾患モデル |
研究概要 |
正常ビーグル犬体細胞を用いてiPS細胞の作製と維持の技術の確立を目指した。 1.イヌ体細胞からiPS細胞の作製:EOSシステムを用いたリプログラミング:イヌの4因子(Oct3/4、Sox2、Klf4及びcMyc)を通常のウィルスベクターにより導入する方法では、iPS細胞様のコロニーは多数出現するが、いずれも内因性の幹細胞マーカーの発現が誘導・維持できていない等の不完全な点があった。そこでOct3/4のプロモーター、すなわち内因性の遺伝子発現が誘導された時にのみ、薬剤耐性遺伝子が発現し、同時にGFP遺伝子も発現するように構築されたEOSベクターを、4因子を発現するレトロウィルスと同時に、イヌの線維芽細胞に導入した。導入後、薬剤耐性及びGFP蛍光を指標として、完全にリプログラミングされたクローンを選択した。その結果、形態、細胞表面抗原の発現、及び内因性幹細胞マーカーの発現の点から、iPS細胞として評価できるクローンを複数樹立することが出来た。 2.作製したイヌiPS細胞の培養維持:血清を含まず、含有物の組成が判明している培地(Chemically defined medium、CDM)による維持を試みた。種々の市販のCDMに、いくつかの増殖因子あるいは阻害剤を添加した培地により、形態を維持したまま培養可能な条件を見出すことができた。 3.作製したイヌiPS細胞の機能評価:作製したiPS細胞が標準的ヒトiPS細胞と同等な機能を有しているかについて、ヒトiPS細胞の評価法である幹細胞マーカーの発現確認、導入遺伝子のサイレンシング、核型解析、奇形腫形成能などを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトiPS 細胞の樹立と異なり、イヌiPS細胞の樹立の場合は、4因子を用いたオリジナルのリプログラミング法では、完全にリプログラミングされる細胞は、極めて少数であることが判明した。この問題に対して内因性の多能性維持遺伝子が誘導されることを指標として薬剤選択可能なEOSベクターを用いることで対応できることが判明したことは、大きな進歩であると考える。また含有物の組成が判明している培地での培養が可能となったことは、血清ロット間の影響等を考慮する必要がなく、また今後、種々の増殖因子等の役割を解析する上でも意義あることを考える。
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今後の研究の推進方策 |
短期の培養での問題は解決されたが、長期培養においてのサイレンシングの問題がまだ解決されていないために、サイレンシングを考慮しないでよいプラスミドベクターによる樹立・維持を検討する必要があると考えている。またin vivoでの多分化能の証明の一つである奇形腫形成能に関しても検討する必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進展に伴い、年度末に新たな消耗品の購入が必要となったが、期間内での購入が困難な物品であったため、繰越金(613,467円)として、平成25年度での購入費に充てた。繰越金を合わせて、研究費は主として消耗品費として使用し、一部旅費等に充てる予定である。
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