研究課題
我々が同定に成功している小胞体ストレストランスデューサーBBF2H7の骨格系組織における機能解明を目指した。BBF2H7は小胞体ストレスに応答して膜内切断を受け、そのN末端断片が核内に移行し、転写因子として活性化する。これまでにBBF2H7が分泌経路を活性化することで軟骨基質タンパク質の分泌を促進することで軟骨組織の形成に寄与することを明らかにしていた。しかしBBF2H7自身の転写誘導メカニズムは不明であったため、その解明を試みた。その結果、BBF2H7のプロモーター領域内には、軟骨細胞の分化を制御するマスターレギュレーターであるSox9が結合し得るSox結合配列が存在することを見出した。ルシフェラーゼアッセイ、Chromatin immunoprecipitationアッセイなど、一連のプロモーターアッセイによって、Sox9はBBF2H7プロモーター領域内に存在するSox結合配列に結合し、BBF2H7の転写誘導を促進することがわかった。さらに初代培養軟骨細胞にSox9を発現させると、BBF2H7の発現レベルが上昇するとともにその切断が促進され、転写因子として活性化することを明らかにした。Sox9は代表的な軟骨基質タンパク質である2型コラーゲンの転写誘導を促進することも明らかになっている。Sox9の発現によってBBF2H7の転写誘導が促進されると同時に、2型コラーゲンの合成量が増加することで小胞体に負荷がかかり、緩やかな小胞体ストレスが発生することがわかった。BBF2H7はSox9によって転写誘導が促進された後、この緩やかな小胞体ストレスに応答して転写因子として活性化することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
BBF2H7の転写制御機構を明らかにし、転写因子としての活性化メカニズムの一端も解明することができたことで、当初の計画であった小胞体ストレストランスデューサーの活性化機構の一端を解明し、小胞体から発信されるシグナルによる骨軟骨制御機構の理解につなげることができたため、計画はおおむね順調に進展していると判断する。
BBF2H7だけに留まらず、骨芽細胞で強く発現するOASISや、破骨細胞で発現するLumanなど、一連の小胞体ストレストランスデューサータンパク質の転写制御機構および活性化メカニズムを明らかにすることで、骨・軟骨代謝を制御する小胞体ストレス応答系のシグナル系統図を完成させる。この成果をもとに各小胞体ストレストランスデューサーおよびその下流のシグナル伝達経路の活性化を人為的に操作できる化合物を選定する。また、各小胞体ストレストランスデューサー遺伝子欠損マウスの大部分を作製または入手することができている。これらマウスの解析を通じて、小胞体機能とヒト疾患との関わりを追究する。
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