骨転移の溶骨性あるいは造骨性の傾向を規定するがん細胞とがん微小環境との相互作用の分子メカニズムを解明するために、2光子顕微鏡などの非線形光学技術を駆使し、がん細胞、破骨細胞、骨芽細胞と骨細胞の4種の細胞を同時にかつ経時的に解析できる骨髄インビボイメージング系の構築に向けた実験を行った。 ヒト前立腺がん細胞株を蛍光標識するために、黄色蛍光蛋白質Venusあるいは赤色蛍光蛋白質DsRedをコードするレンチウイルスを作成した。このうちVenus発現レンチウイルスを、溶骨性病変を生じる細胞株PC-3にルシフェラーゼを発現させたPC-3-Luc、および造骨性病変を生じる細胞株VCapに感染させ、蛍光を確認した。PC-3-Luc-Venus細胞に関しては、ヌードマウス脛骨に移植後、2光子顕微鏡を用いた蛍光インビボイメージングを行ったところ、骨に生着したがん細胞を検出可能であった。VCap-Venus細胞に関しては、現在SCIDマウスを用いた移植系の確立を試みている。 また、破骨細胞や骨芽細胞、骨細胞を蛍光標識するために、破骨細胞特異的なCathepsin Kプロモーター、または骨芽細胞系に特異的なI型コラーゲン2.3kbプロモーターの下流にCreリコンビナーゼを発現するマウス(それぞれCatKp-Cre、C1p-Cre)を導入した。CatKp-Creマウスを、Venusとルシフェラーゼの融合蛋白質をCre依存的に発現するマウスと掛け合わせた。 このマウスに対するインビボイメージングでは、骨の存在部位に発光シグナルを検出したが、骨髄内の蛍光は検出できなかった。このため、赤色蛍光蛋白質をCre依存的に発現するflox-TdTomatoマウスを入手し、CatKp-Creマウスと掛け合わせ、2光子顕微鏡を用いたインビボイメージングを行ったところ、骨髄内の破骨細胞を蛍光で検出可能であった。
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