研究課題/領域番号 |
24659680
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
三浦 裕正 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10239189)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | TGF-β / 軟骨 / 変形性関節症 / SHG / 2光子励起顕微鏡 / Smurf |
研究概要 |
2光子励起蛍光や第2次高調波発生などの非線形光学効果を駆使して高空間分解能を実現した生体イメージング法を開発し、transforming growth factor (TGF)-β シグナルを調節するSmad ubiquitin regulatory factor1 (Smruf1) と Smurf2の ダブルノックアウト (KO)マウスの機能解析に応用する。これまで捉えることが困難だった関節症極初期の微小変化を、このダブルKOマウスを用いて解析することで、軟骨代謝に重要な働きを担っているTGF-βシグナル調節系が軟骨変性にどのように作用するかを明らかにする。 具体的には、軟骨病変の評価系構築のため、酵素処理により誘発された軟骨変性を、2光子励起顕微鏡で観察・評価を行った。また、第2次高調波発生により無染色で、コラーゲンを主成分とする軟骨基質を観察することが可能であり、関節軟骨のコラーゲンが変性する過程を検出することに成功した。また同時に、膝関節を構成する靱帯を切離することによって膝関節動揺性を生じ、それにより関節軟骨変性が誘発される関節症モデルマウス作製に着手した。より生理的な状態で観察するため、マウス膝の固定・観察用デバイスを作製し、インビボイメージングにも成功した。TGF-βは多様な作用を持つため、このKOマウスは胎生致死であり、軟骨代謝の解析には使用できない。そのため、 Smurf1 と Smurf2 の ダブルKO マウスを解析することにより、変形性関節症の分子メカニズムを明らかにする。これにより治療の分子標的も同定でき、さらに2光子励起顕微鏡は新しい軟骨変性を評価するツールとなり得る。 本研究課題は、最先端の光計測技術と遺伝子工学の手法を組み合わせることで,軟骨変性のメカニズムに迫るという点で画期的であり、臨床応用に繋がる基礎基盤研究としての成果が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Smruf1 とSmurf2の ダブルKO マウス作製に関しては、胎生致死であるため、Smurf1コンディショナルKOマウスの作成を試みたが、完全なKOのフェノタイプを確認できなかった。そのため、海外より新たにSmurf1コンディショナルKOマウス (Smruf1 Conditional EucommFLPe/ Smurf2)を入手した。 関節動揺性による関節症モデル作製に関しては、2光子励起顕微鏡による観察に向け周辺機器の整備に着手しており、インビボイメージングのため固定・観察用デバイスを作製した。 2光子励起顕微鏡を用いた、第2次高調波発生による軟骨変性のイメージングに関しては、摘出したマウス大腿骨を用いた評価系で、コラーゲンが変性する過程を観察し、定量解析の基礎となるデータを得た。
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今後の研究の推進方策 |
関節症モデルマウスに関しては、今後、2光子励起顕微鏡を用いて、関節症による軟骨の変化を経時的に観察する。これにより、関節症極初期の微小変化を捉えるに挑戦する。そして、酵素処理により観察された変化と比較し、新しい軟骨変性の評価法を確立する。 KOマウス作製に関しては、現在、海外より新たに入手したSmurf1コンディショナルKOマウス (Smruf1 Conditional EucommFLPe/ Smurf2) と、Smurf2KOの系統と交配を試みており、軟骨細胞特異的にSmurf1/2をKOしたマウスの作製を進めていく。このダブルKOマウスの関節症を解析することにより、Smurf1/2を介したTGF-βシグナル調節系が、軟骨代謝の恒常性の破綻と軟骨変性にどの様に作用するかを明らかにする。新規評価法を確立し、関節症極初期を捉え、治療、あるいは予防に関する分子標的を探索する。 将来的には、人工関節置換術等で得られた人検体でも検証し、Smruf1/2の発現とTGF-βシグナルの活性、さらにSmruf1/2の標的分子の変化を遺伝子レベルとタンパク質レベルで解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
Smruf1とSmurf2の ダブルKO マウスの作成および系統維持のための飼料代等、飼育料にかかわる費用、観察デバイス改良のための消耗品費、遺伝子・タンパク質の発現・機能の解析に用いる試薬・プラスチック器具等の消耗品に研究費を使用する予定である。 また、当該研究の成果とその意義について、社会に向けて広く発信するため、さらに研究を発展させるための情報収集や議論等のため、関連学会・研究会に参加するための旅費・参加費や誌上発表のための論文投稿料・英文校正料が必要である.
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