二光子励起蛍光や第二次高調波発生(second harmonic generation SHG)などの非線形光学効果を駆使して高空間分解能を実現した生体イメージング法を開発し、変形性関節症および、軟骨変性疾患の発症分子メカニズムの解明のため、transiforming growth factor (TGF)-β シグナルを調節する Smad ubiqutin regulatory factor1 (Smurf 1)と Smurf2のダブルノックアウト(KO)マウスの機能解析に応用する。この高分解能を有する二光子励起顕微鏡を用いることで、これまで捉えることが困難であった、関節症極初期の微小変化を分子レベルで捉えることができ、さらには軟骨基質を無染色で描出することができる。我々はまず、コラーゲンを主成分とする軟骨基質を酵素処理により分解し、SHGシグナルが経時的に変化する様子を観察することに成功した。また、green fluorescence protein (GFP) 発現するため全身の細胞核が観察できるH2B-GFP ラインマウスを用いて、靱帯切離により変形性関節症を誘発する動物モデル系を確立した。このモデル系を観察することにより、軟骨細胞と軟骨基質の変化を経時的に評価することができた。さらに、老齢マウスを観察することにより、自然発症に近い変形性膝関節症と比較することができた。これらの基礎研究から得られた知見は、変形性関節症の分子メカニズムを明らかにする手がかりと成り、治療の標的分子の同定や、新しい軟骨変性の評価ツールとなり得る。本研究課題は、非線形光学効果と、遺伝子工学を組み合わせることで、軟骨変性のメカニズムに迫るという点で画期的であり、臨床応用に繋がる基礎基板研究としての成果が期待できる。
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