研究課題/領域番号 |
24659682
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
福田 裕康 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (90444984)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 微小血管 / 自動運動 / 骨膜 / 骨粗鬆症 |
研究概要 |
骨粗鬆症に関わる骨代謝異常の背景には、骨組織における代謝と血流の不均衡が存在することが推測される。骨組織の循環障害は血管機能異常に起因すると考えられるが、骨組織の血流を担う微小血管の収縮制御機構は未だ明らかではない。本研究課題は、モルモット骨膜に存在する微小血管を標本として、血管壁追跡システムを用いて血管径の変化を経時的に計測した。また、免疫組織化学染色により、微小血管の平滑筋構築および神経支配に関する検討を行った。 骨膜組織標本では一対の並走する微小血管(外径10μから30μm)が観察され、α平滑筋アクチン染色により輪状に走行する血管平滑筋が観察される血管(動脈)と観察されない血管(静脈)が識別された。輪状平滑筋が観察される血管の約半数においては自発収縮を発生し、自発収縮は細胞外カルシウム除去、ニフェジピンおよびCPAにより消失した。自発収縮の有無に関わらず経壁神経刺激により収縮を生じ、神経性収縮はフェントラミンにより消失、サブスタンスPにより抑制されたが、ニトロアルギニンにより増強した。外因性ノルアドレナリンによる収縮もフェントラミンにより消失、ニトロアルギニンにより増強したが、ノルアドレナリン収縮標本においてサブスタンスPの追加投与により抑制反応を生じ、この反応はニトロアルギニンで消失した。免疫組織化学染色により、微小血管に沿って交感神経マーカーであるtyrosin hydroxylase陽性神経線維およびサブスタンスP陽性神経線維が観察されたが、NO陽性神経線維は観察されなかった。 骨膜微小動脈では自発収縮が観察され、この自発収縮はL型カルシウムチャネルを介した細胞外カルシウムと小胞体からのカルシウム放出に依存していると考えられた。また、ノルアドレナリン作動性の血管収縮神経支配とサブスタンスP陽性神経によるNOを介した抑制性支配を受けていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨粗鬆症の背景に存在する骨組織をめぐる循環動態は十分解明されていない。本研究課題は、これまで研究対象とされていない骨膜に存在する微小血管の動態に着目し、その収縮制御、神経反応といった生理的機能を解明し、さらに免疫組織染色により平滑筋構築、神経支配を明らかにすることである。 3週齢の正常なモルモットから摘出した脛骨骨膜の血管は、厚い骨膜の中にしっかりと埋まっているが、骨膜を剥離してシート状に固定することで、顕微鏡下でシートして安定して観察できるようになった。骨膜には一対の平行する微小血管が観察され、免疫組織染色により平滑筋構築を観察したところ、輪状の平滑筋層をもつ動脈と輪状の平滑筋層をもたない静脈の特徴が明らかとなった。この微小動脈は観察された約半数において自発収縮を発生し、自動収縮における静脈との違いも明らかとなった。この自発収縮の発生にはL型カルシウムチャネルを介する細胞外カルシウムと細胞内カルシウムストアからのカルシウム放出が必要であることも分かった。 また、同測定装置では、安定して経壁神経刺激が行えるようになり、経壁神経刺激は収縮反応を示し、この収縮はノルアドレナリン作動性の血管収縮支配であった。同時にサブスタンスP陽性神経によるNOを介した抑制性支配を受けていることもわかった。 本年度は、若年の正常な脛骨骨膜における微小動脈の動態を機能的・組織的に明らかにすることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に確立した血管径測定および組織学的検討法の技術を下地に、骨粗鬆症の背景にある骨代謝の低下が想定できる老齢モルモットを用いて、その骨膜細動脈の変化を比較する。 機能的検討には、1.骨膜動脈の自動収縮を週齢によって観察し、老化による自動運動の変化を観察する。2.週齢による神経反応を比較し、血管収縮反応の変化を検討する。3.神経刺激による反応と薬物による血管反応を週齢で比較する。 組織学的検討としては、1.週齢による微小血管をα平滑筋アクチンで染めて平滑筋の3次元構築を比較する。2.週齢における骨膜動脈を支配する自律神経の形態的な変化を検討するため、コリンアセチルトランスフェラーゼ、チロシン水酸化酵素の各抗体で染色し共焦点レーザー顕微鏡で観察する。3.週齢における骨膜動脈周辺の感覚神経の形態的変化を検討するためにその神経伝達物質であるサブスタンスP、カルシトニン関連遺伝子ペプチドの抗体で染色し、共焦点レーザー顕微鏡で観察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.老化による骨膜微小動脈変化を検討するため、週齢の違うモルモットを購入する。 2.血管平滑筋の特徴を見出すために、α平滑筋アクチン、チロシン水酸化酵素、コリンアセチルトランスフェラーゼ、サブスタンスP、カルシトニン関連遺伝子ペプチド、カプサイシン受容体に対する組織染色を行うため、測定に必要な消耗品を購入する。平成24年度には3週齢のモルモットに適合するカルシトニン関連遺伝子ペプチド抗体が調達できなかったため、その点については未検討のため残金が生じた。平成25年度は適合する抗体を確立し神経支配をより明らかにする。 3.老化と収縮反応の関連をみるために、自発活動や神経刺激に対する効果を薬物反応と比較する。薬品費は神経活動や自発収縮に関する薬品の購入にあてる。 4.成果を公表するために学術大会参加渡航費を計上する。
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